新車販売台数急減と振幅を増す個人消費

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2010年10月04日

9月の新車販売台数は季節調整値の前月比▲31.2%で、8月の急増(同+25.9%)から一転して急減し、2009年7月の水準を下回った(季節調整は大和総研)。7-9月平均の新車販売台数は前期比+5.6%となったため、7-9月期の個人消費への寄与度は事前予想よりもかなり小さくなるだろう。

すでに補助金制度を終了した欧米の新車販売台数の動きをみると(図1)、制度終了後に短期間かつ急激に調整する傾向がある。また制度が終了した後の減少幅は各国で異なっているものの、急落後の水準はほとんどの国で制度開始前を下回っており、落ち込んだ後の反動増は小さい。今後、日本は制度終了による調整期間は1ヶ月で終わらないとみられるものの、短期間で終わる可能性が高く、調整後の水準は制度開始前を下回るであろう。ただし、自動車メーカーの販促活動や新型車の投入などが販売台数の落ち込みを緩和するかもしれない。

GDPベースの実質個人消費支出の中身をみると、09年後半以降の個人消費は耐久財消費の回復によって持ち直してきた。耐久財の中身をみると、主に乗用車とテレビの2つが寄与しており、短期的にはこの2つが制度変更もあって消費動向を決めるだろう。耐久財以外で消費全体に影響を与えるものとしてたばこが挙げられる。値上げによるマクロ経済への影響を試算すると、10年7-9月期は駆け込み需要の拡大によって実質GDPを前期比+0.2%pt(実質個人消費を同+0.3%pt)押し上げ、10-12月期は反動減で同▲0.2%pt(同▲0.4%pt)押し下げると予想される。

10年7-9月期はたばこの駆け込み需要のほか、猛暑効果でエアコンや飲料等を中心に消費が増加したとみられる。乗用車消費もプラスに寄与したとみられるため、個人消費は増加した可能性が高い。しかし10-12月期に入るとこれらの反動減が消費を押し下げる。テレビの駆け込み需要があればこれらの下押し圧力を緩和することになるため、駆け込みがどの程度出てくるかがポイントとなる。さらに家電エコポイント制度の延長がなければ、11年3月末にかけてエコポイント対象製品への駆け込み需要が消費を押し上げるだろう。

総じて見ると、個人消費は気候や制度変更といった特殊要因に翻弄される状況が年度内は続くことになる。しかしながら、個人消費の基調を決めているのはやはり所得である。今後、雇用・所得環境は緩やかながら改善していくとみており、それにしたがって消費も緩慢なペースで回復していくだろう。特殊要因に目を向けすぎることなく、冷静に個人消費の基調をみていく必要がある。

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神田 慶司
執筆者紹介

経済調査部

シニアエコノミスト 神田 慶司