中国の産み分けが世界を揺るがせる

2010年3月8日

  • 情報ビジネス推進部 高橋正明
近年の中国では、新生児の男女比のバランスが崩れている(※1)。自然なら女100に対して男105程度だが、超音波診断を用いた産み分け(本来は違法)により、男が120を超えてしまっている。男女でペアを作ると、通常は男の20人に1人が余るだけだが、今の中国の子供では5人に1人も余ってしまう。当然、この世代が成人して結婚適齢期になる頃には、深刻な「男余り」が発生する。一般的に、未婚の若い男が溢れる社会は不安定になる傾向があるので、社会学者や安全保障の専門家は、将来の中国の波乱要因として注目している。

ところが、この性別の不均衡は将来の問題ではなく、既に現在の世界経済にも甚大な影響を及ぼしているという研究が最近発表された(※2)。「カネが無い男は結婚できない→家系断絶」を懸念する親は、一人息子の将来を思って貯蓄に励む(※3)。これがこれまで謎とされていた中国の異常に高い貯蓄率の原因だというのである。過熱する国内投資を賄う分を差し引いても、国全体ではGDPの10%前後もの資金余剰が発生する。この巨額のチャイナマネーがグローバル金融市場に流れ込んで「カネ余り」が促進されたことにより、アメリカの過剰消費・住宅バブルなど世界経済の不均衡が拡大したことになる。

2005年に当時のグリーンスパンFRB議長は長期金利の低さを「謎」と述べ(※4)、バーナンキ理事(現在の議長)は「グローバルな貯蓄過剰」にその原因を求めた(※5)。長期金利の謎は中国などの高貯蓄率で解けるということだが、中国の高貯蓄率の謎は依然として未解決のままだった。もしこの研究が正しければ、ついに「謎はすべて解けた」ことになる。

それにしても、「一人息子の将来を思う親心」が世界経済を揺るがせるとは、中国のスケールの大きさには驚かされるばかりである。これからも、中国からは目が離せない。


中国の各年代の男女比(女100に対する男) 2007年

中国の外貨準備(年末)

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