危機感の欠如

2009年11月10日

  • 公共政策研究所 中野充弘
「状況がひどくなり、生き残るためにはこれまでと違ったことをやらなければならないと思い知るまで、組織というものは根本的に変わろうとしない。」これは、IBM元会長のガースナー氏の言葉である。

8月末の総選挙で、民主党政権が誕生してからすでに2ヶ月が経過した。しかし当初膨らんでいた「何かが変わりそうだ」という期待は、少しずつ萎みはじめているように感じる。民主党のマニフェストに高々と掲げられた「政権交代」が今回実現した背景の一つに、前自民党政権に対する不満があったのは間違いない。それが「政権が変わることで新しい風を取り込みたい」「旧体制にお灸を据えて反省を促す」「心機一転」等の国民感情につながったのだろう。

しかしながら、政権交代をすれば問題解決に向けて全て動き出すというものではない。確かに政権交代は大きなインパクトを与えているし、今後具体的な成果が見えてくる可能性は否定しない。しかしより重要なことは、国民が「これまでと違ったことをやらなければ生き残れない」と実感することではないか。本気にならないと先に進むことは出来ない。

振り返ってみれば、過去20年程の間日本はほとんど成長していない。例えば名目GDPは1991年度473兆円が2008年度は497兆円、今年度は景気悪化の影響で480兆円程度となる予想である。また最近話題となることが増えた税収も、1990年度60兆円(一般会計税収、決算ベース)をピークに減少し、今年度は法人税の落ち込みから40兆円を下回る見通しであり、その分国債依存を高めざるを得ず、国債発行額が税収を上回る状況に追いやられている。株式市場も1989年末の3万8915円をピークに現在も1万円前後で低迷したままである。

対照的にこの間、中国やインド、ブラジルといった新興国は大きく成長し、一方では国内において高齢化が着実に進んでいる。我々はこの20年間、何をしてきたのだろうか。

年金、介護、医療、雇用などわが国の直面している課題の解決は容易ではない。またこれらの課題解決の原資となる成長戦略も見えてこない。今必要とされることは、根拠の薄い楽観論を提示したり、一時的な景気対策でお茶を濁すのではなく、国民が本当の危機を実感するように世論を盛り上げていくことではないか。

最後にもう一度ガースナー氏の言葉を紹介しよう。
「企業の変革は危機感と切迫感から始まる。」

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