税制改正プロセスの改革のゆくえ

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2009年09月17日

2009年8月30日に行われた第45回衆議院議員選挙で、民主党は、政権交代を実現した。新しく誕生した民主党中心の連立政権が、税制をどのように構築していくのかが注目されているが、一方で、税制改正プロセスの改革についても注目が集まっている。

現在の税制改正は、内閣総理大臣の諮問機関としての「政府税制調査会」が中長期的な視点から税制改正の方向性を提言するのに対し、与党税制調査会が次年度の具体的な税制改正内容及び税率等の詳細を決定するというプロセスを経ている。事実上の税制改正内容の決定は与党、特に自民党のごく一部の議員が行っていたといわれる。

しかし、「民主党政策集 INDEX2009」における民主党の主張によれば、現在のような税制改正プロセスでは、与党税制調査会、政府税制調査会、経済財政諮問会議がバラバラに審議を行っており、特に、与党税制調査会は不透明な形で政策決定を行い、既得権益の温床となっているとしている。

そこで、民主党は、政治主導の政策決定を行うとともに、政策決定のプロセスも透明化するとして、党の税制調査会は廃止し、財務大臣の下に政治家をメンバーとする新たな政府税制調査会を設置し、政治家が責任を持って税制改正作業及び決定を行うとしている。

そして、従来の政府税制調査会は廃止し、代わりに専門家委員会を新しい政府税制調査会の下に置き、意見集約のプロセスは原則として公開するとしている。

たしかに、これらの改正が実現すれば、従来の与党税制調査会が各業界の要望を吸収・調整するという構図はなくなる。民主党の主張する「公平・透明・納得」という納税者の視点に立った税制改正を行うということが実現できるのかもしれない。

しかし、長年続いている税制改正プロセスを短期間に変えることは果たしてできるのであろうか。既に各省庁からの税制改正要望は出揃っている。例年12月には来年度の税制改正の大枠が打ち出され、翌年の1月の通常国会では税制改正審議が始まる。あと3ヶ月弱で民主党が目指す税制改正プロセスの改革は間に合うのであろうか。また、専門家を交えず実務への影響も含めた議論が可能なのか。あるいは、各業界の要望への対応はどうするのか。まったく対応しないというのは難しいと思われるが、どのようにして意見を汲み取るのかといった点も懸念される。国民はこの改革に注視する必要があると思われる。

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執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 鳥毛 拓馬