資本主義経済の不安定性とマネー

2009年9月14日

  • 資本市場調査部 牧野潤一
資本主義の歴史は13世紀頃まで遡ると言われ、18世紀の産業革命以降から急速な発展をみせることになる。産業革命によって大量の資本を使って大量生産が可能となったが、一方で大規模なバブルや恐慌も発生するようになった。 
資本主義経済の持つこうした不安定性の背景には、生産した商品の「買い」と「売り」が一致しないことが挙げられる。これはマネーに価値保蔵という機能があるためである。マネー保有は利子が付くことで購買力が維持されるため、いつマネーを使うかのタイミングは時間的に制約されない。したがって、人々がマネーを溜め込んで商品購入を先延ばししようとすると、商品の「買い」と「売り」が一致せず、商品が大量に余って恐慌に至ってしまう。逆にマネーを一斉に放出する場合には、ハイパーインフレが発生する。

恐慌やデフレを抑えるには、マネーを時間とともに減価させればよい。この場合、マネー保有にはマイナス金利が付くことになるから、蓄財は損となり、マネーは商品の購入に向けられる。こうした減価するマネー(スタンプ貨幣という)は、大恐慌時にドイツやスイス、米国の一部地域で実践され、実際、地域の景気回復に寄与したが、残念ながら中央銀行によって廃止されてしまった。
ただ、現実にスタンプ貨幣が発行できなくても、金利をゼロ%とすれば、マネーを持っていても利子は付かないため、ある程度は商品の購入に振り向けられるだろう。しかし日本の場合は、ゼロ金利が長らく続いても、家計は消費支出を高める気配はない。これは利子が全く付かなくても、マネーを保有したいという強い動機があるためであり、そこには月並みであるが、将来への不安があるだろう。

新たに発足する民主党政権にとって、内需振興は最大の課題であり、そこには将来不安の解消が欠かせない。格差是正、年金不安など長期的な視点で政策を考えていく必要がある。国民は資本主義経済を先鋭化させた市場原理主義、すなわち“神の見えざる手”よりも、政府の暖かい“見える手”に期待を寄せていると思われる。

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