過熱してきた中国不動産市場?

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2009年07月24日

  • 由井濱 宏一
中国の景気回復が鮮明になり、株価も堅調に推移する中で、中国不動産市場に対する警戒感が高まっているようだ。上海にある不動産開発会社によると、同社の物件に関して想定していた以上に好調な販売状況が継続しており、過熱感すら見え始めているとの指摘がある。一例を挙げれば、同社が5月に売り出したマンション、一戸建て住宅約70戸は2カ月で完売し、モデルルームとして公開していた物件も1時間ほどで売り切れとなったようだ。同社によると、こうした速いペースでの販売は近年まれに見る現象で購買意欲の強さを肌で感じているという。

これらの物件価格は、マンションで150万~200万元(2100万円~2800万円)、一戸建てで600万~700万元(8400万円~9800万円)と中国では高価格帯にあり、富裕層中心に買い意欲が非常に旺盛とのこと。価格自体もこの2カ月くらいは上昇傾向にあり、一部では07年の最高値を更新しているような物件もあるといわれる。また、弊社の上海事務所に隣接する高級マンションは中国で最も高額の物件のひとつといわれ、これまで買い手がなかなか付かなかったのが、6月に急速に売れ始めたとの報道もある。実際、中国の70都市の居住用不動産価格指数は、08年12月以降、前年比ベースで下落が続いてきたが、09年6月にはプラスに転換、不動産市場の回復が広範囲に及んでいることがわかる。都市によっては広東省の深せん市のように、08年年末から20%近く上昇しているケースもある。リーマンショック後の落ち込みで購入側、販売側で我慢比べが続いていた状況から一気に市場が動き始めた感がある。

こうした不動産販売の活況は08年後半の不動産市場活性化策に加え年初から続く株価上昇による資産効果、また、銀行の不動産関連融資の拡大など様々な理由がある。なかでも注目できるのはこれまでの金融緩和の進展で将来的なインフレ懸念が強まっており、インフレヘッジとして不動産に資産を移している動きが目立つこと。富裕層のほとんどは既に1件目の不動産を保有しており、2件目を購入して、将来の値上がりを期待しつつ既に保有している物件を賃貸に回すといった形で資産の保全を図っているようだ。高リターンの投資商品といえば中国では株式か不動産といわれているが、投資リターンに敏感な中国の投資家の果敢な行動が垣間見える。

また、上海地域でそもそも不動産の供給自体が不足気味であることも価格上昇に拍車をかけている点も指摘されている。上海地域への年間人口流入をみると需要としては30万戸程度必要であるのに、実際は15万戸程度の供給しかないとのことで価格上昇期待は中長期的に見ても高い。

上海での状況を参考にすれば、北京などの他の大都市も似たような状況にある可能性は高い。年末にかけて不動産市場のバブル懸念が今後台頭してくる可能性さえあろう。中国人民銀行もこうした状況は十分つかんでいると思われ、年後半にかけての金融政策に影響を与えそうだ。最近でも、中国の主要都市において不動産関連融資に何らかの規制策が導入されるのではないかとの噂で中国国内株式市場が下落を演じたこともある。年末にかけての中国の金融政策(引き締めモードへの転換?)に注目する必要がますます高まってきたように思われる。実際に信用拡大に対する注意喚起などが行われれば、金融や不動産セクターへの投資センチメントは悪化する可能性がある。

中国の住宅不動産価格の伸び率推移

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