暴風雨が去った後で

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2009年05月11日

  • 小林 卓典

景気の最悪期が過ぎたとして世界的に株価が上昇している。実体経済の改善点は、大幅な減産の結果、在庫調整にめどがつき、増産に踏み出す企業が増えていることである。一方、米国のストレステストの結果が公表され、これまで不透明と一括りにされてきた金融機関の損失規模と必要自己資本額について、個々の金融機関の実態が見えてきた。経済も金融システムもいずれも回復途上にあるとはいえ、昨年秋から続いていた暴風雨はようやく去ったということである。ただ安堵するには少し早すぎる、というのは危機が残した爪あとが非常に大きいことにある。

日本経済のGDPギャップは、1-3月期ですでに40兆円程度、GDP比で約8%に拡大していると推計される。4-6月以降、経済成長率がプラスに転化することが期待されるが、潜在成長率を下回る限り、マクロ的な需給ギャップの拡大は続く。その場合、雇用情勢の好転と、デフレ傾向の払拭は望みがたく、外需の急回復がない限り、日本経済の停滞は続くだろう。

恐慌型の不況を回避しつつあることは朗報だが、需要が極端に落ち込んだ後、今のような需要の揺り戻しが起こるのはごく自然なことである。これを持続的な回復につなげるため、政策当局に望まれることは、景気刺激策の効果を点検し、財政・金融の両面から追加対策の必要性を検討することである。

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