民間設備投資喚起の対策を

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2009年04月02日

  • 大和総研 顧問 岡野 進

4月1日に発表された日銀短観は足元の真っ暗な経済状況を映しつつ、先行きにいくらかの望みを持たせてくれる内容であった。3月の大企業製造業の業況判断DIは昨年12月時点の予想-36を大きく下回る-58で、この景気が加速的に悪化してきた状況を反映している。一方、同DIの6月予想は-51と7ポイント改善するものなった。非製造業は製造業に比べれば穏やかであるが、同じ傾向になっており、3月の大企業非製造業の業況判断DIは昨年12月時点の予想-14を大幅に下回る-31であったが、6月予想は-30とわずかではあるものの改善予想になっている。

 これを希望的観測とばかりは言い切れない。鉱工業生産指数の製造工業の予測指数では、3月が+2.9%(前月比)、4月が+3.1%(前月比)と回復する予想となっている。3月の予測は前月の段階でも+2.8%であったから、かなり実現性の高い予測であると思われる。

今回の製造業の生産急減過程において、たいした在庫調整圧力は働いていない。最終需要の減少が生産減少に直結した形で、在庫はバッファーの働きを示さなかった。それだけに本格的に生産が回復過程に戻るのかどうかは最終需要しだいであり、米国の景気の安定化に加えて国内需要の回復が望まれるところだ。

政府は09年度予算を成立させ、補正予算を見据えた次の大型経済対策モードに入っている。財政支出拡大は中長期の日本経済の戦略目標を踏まえて行われるべきであり、雇用、環境、少子化対策などで有効な支出に練られることが望ましい。

加えて、民間需要の喚起を図る策を打っていくべきである。昨年秋まで企業の設備投資は比較的高い水準にあったため、それ以上に設備投資を喚起することはかえって過剰設備形成となるおそれがあった。しかし、現在は企業設備投資は急減過程にある。企業設備投資の現状をみると、減価償却費を除いた純投資では年率10兆円程度(GDP比2%、大和総研推定)程度に急縮小している。今の動きでは今年中にも純投資は再びゼロという状況に陥りかねない。民間の投資活動を活性化させる措置をとるべきタイミングに入ってきたと思われる。

全面的な設備投資減税を「刺激型」で行うには純投資部分に対する税額控除による投資減税がもっとも効果的である。例えば有形固定資産純取得額の10%を税額控除とすると、前向きな投資を行う企業がメリットを享受でき、産業構造の改革も進めることができる。環境、エネルギー、研究開発に対しては減税率を大きくすることも検討してよいだろう。

日本の純投資比率((民間設備投資-民間企業固定資本減耗/GDP、名目ベース)

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