金融規制のあるべき姿とは?~CDSを巡る米国規制~

2009年2月19日

  • 制度調査部 金本悠希

先週の2月14日、G7財務相・中央銀行総裁会議が開催されるなど、各国とも金融危機対策を相次いで行っている。昨年深刻化した金融危機は、様々な要因が複雑に絡み合った結果と考えられるが、一部の議論には、規制が行われていないCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の残高が巨額だったことが最大の原因とするものがある。

実際、国際決済銀行(BIS)によれば、2008年6月末時点でCDSの想定元本額は57兆ドルであった。この額は、世界全体のGDP合計額も上回る額であり、CDSが金融危機を深刻化させたのではないかという議論にもうなずける部分がある。しかし、これに対して業界関係者は、この議論は相殺を考慮していないと反論している。つまり、CDS市場では、同じ参照組織(reference entity)について売りと買いの両方のポジションを取る裁定取引がよく行われるが、この場合のグロスの取引量は売りと買いの両建てとなる一方、実際にとっているリスク量は、ポジションが相殺されるので限定的であるということである。

このようにCDSが金融危機の最大の原因だったかどうかについては議論があるが、米国の議会では、CDSを規制する法案がすでに4本提出されている。具体的には、(店頭)デリバティブ取引を、商品先物取引委員会(CFTC)の規制の及ぶ取引所で行わせる、あるいは、CDSのプロテクションの買い手が、社債の保有者であるなど参照組織のエクスポージャーを保有していない限りCDSを禁止するなどの内容である。

相次いでCDSを規制する法案が提出されている理由は、そもそも米国ではCDSに対する規制が(インサイダー取引規制などを除き)行われていなかったことによる。これは規制の抜け穴が生じてしまったためというより、米国議会が意図的にCDSに対する規制を行わないとする法律を制定したためである。つまり、2000年にCDSを含むスワップ契約について、プロ投資家の間で行われる店頭取引の形態のものは商品取引所法の適用外、及びSECの規制対象外であるとしたのである(2000年商品先物現代化法)。

このようにスワップ契約を規制対象外とした実質的な理由は、当時のグリーンスパンFRB議長とサマーズ財務長官の議会証言によれば、米国市場の国際的競争力強化だと考えられる。つまり、規制を嫌ってデリバティブ市場がヨーロッパなど他国に逃避してしまうことに対する危機感から、規制を適用しないとしたのである。

この議論は、今後のCDSの規制のあり方についても2つの示唆を与える。一つは、CDSを含むデリバティブ規制には国際的な連携が必要ではないかということである。各国が単独で規制を行うと、かつての米国のように、市場が海外に逃避することを恐れて自国の規制を緩和するという「規制緩和競争」が生じ、リスクが増大してしまう懸念があるからである。もう一つは、ただ規制すればよいというわけではなく、市場の競争力についても考慮する必要があるのではないかということである。元米国国家経済会議議長のスティーブン・フリードマンは、「必要とされているのは、リスク・テイキング(リスクを厭わない行動)と創造的な才能を金融システムから取り除くことなく、変動の度合いを大幅に和らげるような金融規制だろう」と述べている。

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