学校法人に「資産運用委員会」の導入を

2009年1月30日

  • 公共政策研究所 宇野健司

学校法人の資産運用が、米国発の金融危機などの影響を受けて、難しい局面を迎えている。文部科学省も、2009年1月6日付けで各学校法人理事長向けに、「学校法人における資産運用について」と題する「通知」を出し、注意喚起を促している。具体的には、以下の7点の再確認を指摘している。(1)基本方針、(2)権限と責任、(3)意思決定の手続、(4)運用状況のモニタリング、(5)運用期間と運用成果目標、(6)保有し得る有価証券の種類・内容、(7)運用限度額。

実は、上記の(1)~(7)の中で、ほとんどの項目は、既に、各学校法人において、「寄附行為」「運用規程」「内規」等で整備されている場合が多い。問題は、「(4)運用状況のモニタリング」であろう。つまり、それらの規程や方針が適切に実行に移されているかどうかを「中立的・専門的にモニタリングできていたか」である。実際の運用がそれらに沿うような形で行われていたかどうかを、定期的かつ適切にモニタリングできていなければ、せっかくの規程や方針が無意味に終わってしまう。

では、学校法人以外では、どのような運用モニタリング体制が整備されているであろうか。例えば日本私立学校振興・共済事業団(私学事業団)の私学共済部門には、「資産運用検討委員会」という組織があり、委員長以下5名の外部委員が名を連ねている。構成は、大学教授、シンクタンク研究員、実務経験者などであり、年2回程度、開催している。また、独立行政法人の中小企業基盤整備機構にも、「資産運用委員会」が設置されており、7名の外部委員が招聘されている。構成は同様に、大学教授、シンクタンク研究員などである。いずれも、資産運用に関する諮問機関として、毎期の運用方針・資産配分・運用環境・運用状況などについて定期的に議論・助言を行っている。

学校法人についても、上記のような運用モニタリング体制を導入すべき時機にさしかかっていると思われる。具体的には、「資産運用委員会」を設置し、外部委員(2~5名)と内部委員(数名)、合計5~10名前後のメンバーとし、年2回程度、開催するのが現実的であろう。基本的には、意思決定機関ではなく、例えば理事長や財務担当理事の諮問機関とし、資産運用に関する現状分析、意見交換、質疑応答などを行うことを目的にし、フランクなディスカッションが出来るよう、あまり大人数で形式的にならないようにするのが良いであろう。委員の任期は1年とし、再任は妨げない。議題としては、まず直近の運用状況の報告を受け、それらが本来の運用方針に沿ったものだったかどうかを話し合う。そして、今後の運用環境や経済金融情勢、銀行など預金先金融機関の経営状況、今後想定される情勢の変化や注意点などについて意見交換を行う、という議事進行が想定される。

今回の件で浮き彫りになったポイントを3つあげるとすれば、(1)「運用担当者個人の資質や能力」ばかりに頼るのではなく、「組織」として資産運用の適切性・安全性をチェックする体制の構築、(2)「内部」スタッフのみで問題に対応することの難しさと、「外部」の専門家の目による適正なモニタリングの必要性、(3)運用担当者のみに責任を押し付けるのではなく、専門家を入れて彼らをサポートしてあげる仕組みを構築すること、であろう。4月からの新年度入りを前に、もう一度、資産運用体制を見直し、実効性を高める対策に着手すべきだろう。

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