鉄道などインフラ産業の積極的資金調達に期待

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2009年01月13日

  • 大和総研 顧問 岡野 進

世界同時不況が、自動車産業を中心に日本の輸出型製造業に厳しい経営環境をもたらしている。現在の激しい需要の落ち込みは景気循環の1局面と捉えることも可能だが、米国経済のデレバレッジの動きは中期的なものであり、今後かなりの期間にわたって米国の消費需要増加には依存はできなくなった。米国の家計のバランスシートが回復するまで待つほかはない。

米国はオバマ政権のもとで大型の減税と公共投資による景気対策に動き出している。日本を含め他の国も財政出動によって需要を喚起させる政策へと移行している。しかし、今回の不況の深刻さを考えるとこうした政策だけで短期に景気が急回復し、2007年以前の世界経済高成長の軌道が復活するのは困難であろう。新興国経済のポテンシャルには期待できるが、これまでの新興国の経済成長も米国などの需要に依存する面が強かっただけに、産業のミスマッチ問題克服も含め、内需型への構造転換が行われなければならない。

それではゼロ金利状態の市場が示唆していることは何であろうか? まず、長期金利も含めて低金利が実現している。たしかに世界的に社債金利はまだ高止まりしているが、安定的なキャッシュフローを得られる企業の資金調達コストは低い。今、世界的に経済成長が見込めない状況の中で資本市場が求めているものは安定的な事業キャッシュフロー主体、インフラ産業による資金調達なのである。一般的にヘッジファンドやPEファンドが困難な環境にある中、インフラ産業への投資を行うファンドに対しては期待が高まっている。

不況の中にあっても必需を向け先とするインフラ産業の中で、価格的にも安定感が強いのは鉄道などの公共交通産業である。エネルギー価格の大きな変動には晒されたものの電力・ガスもその事業の性格から安定したキャッシュフローを生む産業であるという事情に変わりはない。インフラ産業は設備装置型であり、レバレッジは高めであるのが普通だが、現在の市場が高いレバレッジに警戒感を強めている以上、エクイティでの調達も活用するのが適切であるかもしれない。インフラ産業が市場からの有利な資金調達機会を活かし、環境問題への対処なども含めた外延的、内包的両面の投資に取り組むことが経済の回復にも繋がると期待できる。

現在の危機はインフラ産業に属する企業にとって大きなチャンスを提供しているといえるのではないか。

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