魅力的な市場の条件とは何か? ~日本市場は甦る~

2008年11月26日

国連の一組織であるUNCTADが毎年秋に公表している海外直接投資に関する資料の最新版“World Investment Prospects Survey 2008-2010”では、世界で事業を展開する多国籍企業の経営者を対象としたアンケートを行ない、今後3年程度の中期的な観点から、世界の魅力的な市場のランキングとその要因についてまとめている。その報告書を見ると、最も魅力的な市場としては中国やインドが挙げられており、市場規模やその成長性、周辺市場へのアクセスの良さ、相対的に安い賃金などが魅力と感じているようである。また、米国やドイツといった先進国では、新興国と同様の理由に加えて、優れたインフラや政府の対応の良さ、製造部品のサプライヤーの利用可能性の高さ、などが列挙されている。しかし、残念ながら上位10位以内に日本は入っていない。

考えられる日本市場の良い点は、立地条件の良さである。周辺地域には、高い成長率と大きな市場規模を誇るアジア、特に中国・インドや、そしてロシアの極東地域が控えており、BRICs4カ国のうち3カ国と近距離にあるという地理的条件は日本市場の大きな魅力である。さらに、日本市場の優位性として挙げられるのは、労働者の質の高さである。高品質の製品を造り上げる高い技術力と弛まない品質改善への努力は、今後も他国がまねの出来ない圧倒的な市場競争力を持ち続ける可能性があるものと思われる。また、質の高いサプライヤーが豊富に存在することも、日本市場の魅力度を高めていくことになるだろう。

一方で、日本市場の魅力を減じる要因としては、市場成長率の低さがある。高い技術力を持ちながらも、それが効率的な形で結びついていない可能性が高い。例えば、消費者や顧客企業のニーズを適格に把握し、それを販売に結びつける能力・体制が整っていないとか、または、小規模の類似の事業者が多く、互いに共有化できる有形・無形の固定資産を持ちながらも、それらを共通化せずに非効率な経営を行っている、などである。また、政策的なサポートやインフラの使いやすさ、さらには広義のインフラとしての日本語という言語の壁も、大きな障害となっている可能性がある。

こうした要因に共通するのは、日本市場における全体的・ネットワーク的視点の欠如である。そもそも、日本市場は多国籍企業が魅力的だと感じる多くの要素を備えている。今必要なのは、何らかの戦略性・将来的なビジョンの構築であり、それに基づいて個々の力をコーディネートしてまとめていく能力なのかもしれない。そのため、既存の枠組みを超えて、まずは民間企業レベルで異なる分野同士が機能的に結びつくような戦略性が何よりも重要である。その上で、民間では中々取り組めないインフラ面での整備については、政府が積極的にサポートしていくことが必要である。このように民間・政府の両レベルで地道に作業を積み上げていけば、日本市場が魅力的な市場と国内外から評価される日も近いものと思われる。

図表:何が海外直接投資を惹き付けるのか

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