オバマ大統領になったら、お金持ちはどこにいく?

2008年7月29日

やや前の話になるが、メディアを通じて、フランスの三ツ星レストランの著名なシェフが国籍をモナコに変えたと報じられた。彼は、パリやモナコだけでなく、ニューヨークや東京、香港など世界中で様々な形態のレストランを手掛けており、正に世界をまたに掛けている実業家である。

普通の生活をしている我々には国籍を変えることは縁遠い話かもしれないが、スポーツの世界では珍しくなく、その国の代表に選ばれるために国籍を変えるのである。但し、変更後一定期間経たないと代表になれない等、何らかの制約はある。また、他の分野でも、現地で成功して永住権取得や国籍変更などの話はきかれる。いずれにしても、活躍の場を求めて変更するケースが多いようだ。従って、既に成功者となった、例えば冒頭の三ツ星シェフの場合は、多少異なる事情があるかもしれない。実際、報道によると、重い税負担を避けることが国籍変更の動機の一つだという。

議論になっている富裕税は、通常の所得税とは別に、不動産や預貯金、有価証券など一定以上の資産を持つ個人に課されるもので、居住者はフランス国内外にある全ての資産に対して,非居住者はフランス国内にある資産に対して原則として課税されるという(当然、モナコ国籍になれば納税義務はなくなる)。

検索してみると、三ツ星シェフだけでなく、フランスの国民的歌手がスイスに居住を移したとか、長者番付でフランス人が少ないのは大企業の経営者が富裕税のない外国に居を構えているからといったニュースが散見される。つまり、富裕税を逃れるためにお金持ちがフランスから脱出するという現象が起きているのである。このままでは今後も国外に資産が流出していくという危惧が出ても不思議ではない。

一方、あと3か月余りに迫っている米国の大統領選挙でも、富裕層に対する税制が焦点になりそうだ。Urban-Brookings Tax Policy Centerが、各候補者の示した税制改革を基に所得階層ごとのインパクトを分析したところ、2001-03年に成立したブッシュ減税の恒久化を公約に掲げる共和党マケイン候補の案の場合、これまで通り、富裕層ほど減税規模(金額だけでなく、税引後所得比でみても)が大きくなる。これに対して、25万ドル以上の富裕層の減税措置の廃止を打ち出している民主党のオバマ候補の案に基づくと、上位1%の富裕層の税引後所得は1割近く減少すると試算されている。ちなみに、商務省の資料によると、2006年時点で所得が25万ドル以上の世帯は224万世帯であり、全体の1.93%を占めている。

マケイン、オバマどちらの案にしても大多数の国民は多かれ少なかれ減税の恩恵を受ける格好になるものの、後者が現実になったとき、大幅増税になる富裕層はどのような行動を取るだろうか。富裕層が2001-03年の減税措置を恒久なものと認識して、消費を活発にさせてきたというFRBの分析もある。確かに財務当局にとって、企業だけでなく、個人に対する課税の空洞化は大きな関心事になるだろうが、米国全体でみれば、国籍に関係なく、世界中のお金持ちが気前よく米国内でお金を使ってくれることが最も重要かもしれない。

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