世界的M&Aブームとグローバル化

2008年5月22日

  • 資本市場調査部 牧野潤一
近年、世界的にM&Aが拡大している。

全世界のM&A金額は90年代半ばから増加し、2000年のITバブル崩壊後の一時的調整を経て、2007年に過去最高を記録した。M&Aの歴史は19世紀終りまで遡るが、90年代以降のブームはそれから数えて5回目のブームといわれる。M&Aはグローバル化を示す一つの経済活動といえるが、近年のブームは何を示しているのだろうか。

多くのエコノミストは、世界経済はグローバル化しており、新興国が先進国とデ・カップリングする形で成長し、世界経済を牽引していると言う。しかし、近年のM&Aの特徴として挙げられるのは、M&Aの多くが、米国と欧州で起きており、またクロスボーダーM&Aも両地域間が中心であるということである。(2007年の欧米のM&A金額は全体の約76%を占める) 一般には、グローバル化は新興国など周辺経済向けで起こっているとの認識が強いが、実際には、先進国の中心地域で起っているのである。

また、グローバル化とは本質的に世界をカップリングさせるものである。世界経済がそれと逆行するデ・カップリングによって牽引されているのは話が矛盾するのではないか。デ・カップリングは、それ自体が世界経済の枠組みから外れたものであるから、世界のマクロ経済にとって小さい存在か、ミクロ的なものと思われる。世界の企業部門は空前のカネ余り状態にある。もし、新興国経済が本当に大きいのであれば、世界の企業は、新興国需要を目当てに積極的な設備投資を行うはずである。積極的な設備投資があれば、世界はカネ余りではなくカネ不足になる。現状、先進国企業は、設備投資という実物投資よりもM&Aという非実物投資を選択しているのである。彼らは、現在の新興国の小さい需要のために投資を行うのではなく、将来、それらが真に大きくなったときのために、M&Aによって寡占化を進めているようにみえる。

現状、欧米企業は活発なM&Aにより巨大化し、世界の二大市場をグローバル化している。両市場での統合が完了したあとはどうなるだろうか。恐らく、彼らは今度は新興国やアジアをグローバル化していくことになるだろう。

巨大な資本は資本主義経済においては最大の武器となる。近年の米欧のM&Aブームは、グローバル経済における彼らのヘゲモニー構築の始まりを示すものと言えるのではないだろうか。

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