中国のコーポレートガバナンス改革

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2007年12月21日

  • 藤島 裕三
先月、筆者は中国天津市の南開大学にて開催された、コーポレートガバナンス国際シンポジウムに参加した。南開大学は中国最先端の研究機関である、公司治理研究中心(コーポレートガバナンス研究センター)を抱える。本シンポジウムは同センターの主催による。

本シンポジウムは今年で4回目を数える。600人近い国内外の専門家を招いて、2日間にわたり活発な報告・討議が繰り広げられた。各種のプログラムを通じて筆者が感じ取ったものに、コーポレートガバナンス改革に対する中国政財学界の「本気度」が挙げられる。

現在の中国経済は高度成長の最中であり、これを支える潤沢な資金を求めている。グローバルな投資を呼び込むには、企業経営に一定の安心感を与えなければならない。そのためコーポレートガバナンスの整備は、成長を支えるインフラとして重要視されている。

中国のコーポレートガバナンスを定める、最も基本的な法律は公司法(会社法)である。同法は株式有限公司(株式会社)について、5~19人の董事会(取締役会)、3人以上の監事会(監査役会)を置くとし、また上場企業に独立董事(独立取締役)を義務付ける。

特に独立董事に関しては、中国証券監督管理委員会(CSRC)の指導で、2名以上かつ董事会の3分の1以上とされる。独立性の毀損要件についても、1%以上を持つ株主、5%以上を持つ企業の役職員、財務・法務などのサービス提供者、など詳細に示されている。

さらにCSRCは「上場会社コーポレートガバナンス原則」において、董事会に各種の専門委員会を設置することを認めている。うち監査・指名・報酬・審査の各委員会は独立董事が過半数を占め、かつ招集人(議長あるいは委員長)を務めることを要求している。

いずれも極めて高度な内容である。わが国会社法に独立取締役の概念は存在せず、役職員である(あった)ことを欠格事由とする社外取締役を、選択制の委員会設置会社に義務付けるのみ。その委員会設置会社においても、各委員会の議長に特段の資格は求められない。

もっともCSRCの指導および原則は罰則などを伴っておらず、必ずしも全ての中国上場企業が高度な体制を備えている訳でもない。それでもトップダウンによる改革推進は、着実に中国のコーポレートガバナンスを強化し、グローバルな信認を高めていくだろう。

翻って目下わが国資本市場では、外国人投資家の売り越し基調が続いている。要因は様々に考えられるが、コーポレートガバナンス改革の停滞も影響していよう。国際金融センターの地位をも中国に脅かされないため、わが国経済界には意識改革が求められている。

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