オフショア開発の次のビジネスモデル

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2007年12月20日

  • 小原 誠
中国へのITオフショア開発が拡大しているが、中国ITベンダーの利益は約束されている訳ではなく、むしろ最近は利益が減少している。主な課題は、元高と人件費の増加である。日本企業とのオフショア開発契約は殆どが円建てのため、ここ数年の元高による為替リスクは、中国ITベンダの負担となる。また中国沿岸地域では、日本語能力のあるIT技術者の人件費は高騰してきている。これらの要因は、30%以上の減益につながるとの説もある。

この課題は、製造業であれば、かつて日本企業が円高を乗り切ったように、生産性の向上で対処できるかもしれない。しかし、労働集約的なIT開発では、それも限界がある。特に、上海地域の中国ITベンダは、規模的に大企業が少なく、中国オフショア開発ビジネスモデルの将来性に危機感が強い。

中国ITベンダの当面の対応は、規模の拡大による安定収入の確保である。大規模なオフショア開発を受託できれば、その保守フェーズも含めて長期的に安定収入が確保できる。しかし、そのためには中国ITベンダも数百人の体制を用意できる規模が要求される。このため、ITベンダ間のM&Aが活発である。中国沿岸部のITベンダが、相対的に人件費の安い内陸部のITベンダを対象とすることが多い。

しかし、根本的な対応としては、オフショア開発より付加価値の高いITサービスへの事業展開が望まれる。オフショア開発の対象である、ソフトウェア製造工程の付加価値は、もともと高くはない。開発上流工程であるシステム企画や設計工程への参画、SI(システム・インテグレーション)サービスの提供、さらには、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の受託などが具体的な展開である。BPOについては、既にコールセンターやバックオフィス事務業務の中国アウトソーシングが盛んである。今後はITベンダが中心となり、業務作業だけではなく、システムと業務を組み合わせたアウトソーシングに展開できるであろう。このような方向が、オフショア開発の次のビジネスモデルである。

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