「霞が関埋蔵金伝説」の謎

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2007年12月13日

  • 調査本部 常務執行役員 リサーチ担当 鈴木 準
年末恒例の税制改正と予算編成の時期のさなか、「霞が関埋蔵金伝説」が流行している。埋蔵金があるときけば、ぜひ見つけてみたい。それにしても伝説とは謎めいており、謎はできるだけ解き明かしてもおきたい。

第一の謎は、しょせんは国家財政の内部の話ではないかということ。国民も政治家もメディアも、財政といえば一般会計のことだった。特別会計はそれと区分経理されているが、国の信用で運営されているのは一般会計と同じである。会計ごとのルールがあるとはいえ、国家財政のあらゆる利益と損失は国民全体に帰属する。それならば、すべての会計の資産と債務を洗い出して、うまいやりくりを工夫するのは当然だ。かつてなら「隠れ借金」と批判されたことでも、透明性を確保すればよい。特別会計の硬直性こそ問題ではないか。

第二の謎は、埋蔵金を掘り当てたら何ができるのかということ。発見した埋蔵金を年金給付や公務員給与に充ててしまうなら、それ一度きりのことで、翌年以降の財政赤字には何も影響がない。政府(国民)の資産を減らすだけだ。それ一度きりのことはあきらめて、埋蔵金はせめて既存債務の返済に充てたいが、その場合は資産と債務を両建てで圧縮するだけだから、政府(国民)の純資産は変化しない。

第三の謎は、埋蔵金を掘り起こすのが本当に望ましいかどうか。埋蔵金を既存債務の返済に充てれば、それだけ債務の金利負担が減るから、毎年の財政赤字を減らす効果を得られる。しかし、霞が関埋蔵金は地中や倉庫の奥にあるわけではなく、まがりなりにも何らかの金融資産で運用されている。埋蔵金を掘り起こすことには、運用収益を減らす効果もあり、鞘が問題になる。運用がうまくいっている埋蔵金には手をつけない方がよいかもしれないし、むしろ埋蔵金運用の高度化や多様化を考えるべきかもしれない。

最後に、第四の謎は、埋蔵金の話が増税の是非に結び付けられていること。増税をすれば財政収支は改善するが、財政収支とは埋蔵金などの金融資産の残高変化と政府債務の残高変化とを相殺した、純債務の残高変化のことである。仮に、国債発行収入を埋蔵金にしておけば、財政赤字はゼロであることを考えれば分かりやすい。すべての霞が関埋蔵金を考慮にいれた純債務残高の急増(=大幅な財政収支赤字の継続)が財政の課題だと理解すれば、埋蔵金と増税はほとんど別問題ということになる。

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鈴木 準
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