売買単位の統一に向けて

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2007年12月10日

東京証券取引所を始めとする全国証券取引所は、2007年11月27日、「売買単位の集約に向けた行動計画」(以下、「行動計画」)を発表した。この中で、最終的な目標として、わが国の上場会社の売買単位を100株に統一することとしている。その前段階として、2012年4月を目標(仮)に上場会社の売買単位を100株と1,000株の2種類に集約することとしている。

2007年10月22日現在で、わが国の上場会社の売買単位は合計8種類存在するとされている。これが100株に統一されれば、投資家にとっては利便性が大いに向上すると期待されるため、今回の行動計画を歓迎したい。100株以外の売買単位の上場会社にとっては、事務負担が増えることとなるが、今回の行動計画の趣旨を理解し、前向きな対応をお願いしたい。

ところで、行動計画では、売買単位の統一を目指す意義を説明しているが、要約すると次のようになる。

(1)わが国の証券市場の国際競争力の向上には、市場の使い勝手の更なる向上が必要である。

(2)売買単位が何種類も存在する市場は国際的にも少数である。

(3)売買単位集約により、市場の使い勝手が向上すれば、投資家をはじめとする資料利用者の利便性を向上させる。

(4)利便性向上により、中長期的に流動性の向上が期待できる。流動性が向上すれば、資金調達の円滑化が見込まれ上場会社にとっても有益である。既存株主にとっても、より安定した換金機会の確保が見込まれる。

(5)売買単位の種類が減ることで、誤発注のリスクが低減する効果も期待できる(なお、行動計画では、(5)の点は主目的ではないと断っている。)

これらの(1)~(5)はいずれも売買単位統一のポイントとして重要なものである。ただ、筆者としては、これらに加えてもう一点、ポイントを指摘しておきたい。それは証券取引所の取引システムの問題である。

現在、世界規模での市場間競争が激化する中で、市場の取引システムについても、迅速性、安全性、低コストといった観点から競争が進んでいる。そうした中で、上場会社の売買単位がまちまちで、それに合わせて株価も数百円のものから数百万円のものまで幅広く存在する。更には、それに伴って、値幅制限や値刻みといった市場の仕組みも複雑であるといったことは、わが国の証券取引所の取引システムにとって大きなハンディとなり得る。

企業ごとに売買単位の設定が異なるという複雑さがなくなれば、証券取引所におけるシステム開発の効率化やシステムへの負担の軽減などが進むことが期待できる。特に、今後、わが国の証券取引所が、世界の市場の有力な一角を担うことを目指すのであれば、取引規模の増加にも対応できる充分なシステム容量・速度が求められる。そのためには、少しでもシステムへの負担を軽減する必要がある。その意味でも、売買単位の統一は不可欠であろう。

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執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 横山 淳