金融緩和がモラル・ハザードとは?

2007年10月1日

  • チーフエコノミスト 原田泰
サブプライム・ローンで動揺する金融市場を鎮めるために金利を下げることがモラル・ハザードをもたらすという議論があるが、私にはまったく理解できない議論だ。

モラル・ハザードとは、保険があるから却って乱暴な運転をするという問題だ。金融市場が動揺すれば、政府ないし金融政策当局が金融を緩和してくれるという期待が一般化することによって、却って人々が投機的になるからモラル・ハザードになるというのだが、このモラル・ハザードの程度はごくわずかだ。

FRBが金利を引き下げた効果は、金利が5%でなく4%である期間が通常よりも1年間長く続く、あるいは物価が2%ではなく3%で上昇する期間が1年間余計に続くという程度だろう。その結果、住宅価格が20%でなく15%しか低下しないという程度のことだろう。

住宅価格が2倍になると思って無謀な借り入れをした人々は、住宅価格が15%下がっても20%下がっても手ひどく罰せられる。住宅価格が下がらないと思って借り入れた人は、15%下がっても20%下がっても罰せられるが、15%の下落で留まればずいぶん助かる。無謀な人がより大きな罰を受け、それほど無謀でない人はより小さな罰を受ける。これは大してモラル・ハザードを起こさないのではないか。

もし、金融緩和がなくて、住宅価格が3分の1に下がってしまったら、むしろその方がモラル・ハザードを引き起こすのではないか。3分の1になれば、誰も返せなくなってしまって、自分のせいではないと言い出す。これは日本のバブル崩壊で見たことだ。失敗した人が少数で、失敗していない人が多数であるからこそモラルが維持される。

モラル・ハザードを縮小するためには、むしろ、無謀な借り入れを勧誘した人、手数料を取って債務を押し付けた人に責任を分担してもらうような制度を作る方が効果的ではないか。

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