金融商品取引法の施行を前に ~事業会社も無関係ではない!~

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2007年09月05日

2007年9月30日から金融商品取引法が施行される。利用者保護と金融イノベーション促進という2つの柱を両立させることを目的に、既存の証券取引法が全面改正されることとなるのである。言うまでもなく、金融商品取引法(及びその関連政省令)の大部分を占めるのは業者に対する規制である。それでは、一般事業会社にとって金融商品取引法は全く無関係かというと、そのようなことはない。一般事業会社にとっても様々な局面で影響が生じることが予想されるのである。

一番分かりやすいのは、上場会社に対する四半期報告書・内部統制報告書制度の導入であろう。2008年4月以後開始する事業年度からは、上場会社は四半期ベースでの詳細な情報開示が求められる。加えて、自社の財務情報の正確性を確保するための内部統制システムを整備し、それが有効に機能していたか否かを評価しなければならない。残された時間も少ないことから、各上場会社では急ピッチで対応が進められている。

また、金融商品取引法の下では、組合形式のファンドなどを含む集団投資スキームが有価証券とみなされることとなる。そのため、いわゆる投資事業組合(やその持分)などを販売・運用する者の業者登録の問題が生じることとなる。傘下に投資事業組合を保有する企業の中には、その組合(の運営者)が業者登録免除の特例を受けることができるのか、それとも金融商品取引業者登録をしなければならないのかの確認を急いでいるものもある。

更に大きな問題となり得るのは、いわゆる「プロ・アマ」区分の問題である。金融商品取引法の下では、金融商品取引業者等は顧客をその属性に応じて「特定投資家=プロ顧客」と「一般投資家=アマ顧客」に区分して、適切に管理・対応することが求められる。その際、適格機関投資家は常に「プロ」扱い、一般個人投資家は常に「アマ」扱いと、一義的に決まるので問題は少ない。ところが一般事業会社などが顧客の場合、顧客自身が「プロ」「アマ」のどちらかを選択できるので、業者にとっては管理が非常に難しくなる。

このことは立場を変えて言えば、一般事業会社にとっては金融商品取引業者等との間で「プロ」「アマ」を自由に選択できるということである。同時に、会社自身が、自己責任として、どちらを選択するのか慎重に判断しなければならないということも意味している。特に、上場会社や資本金5億円以上の会社の場合、何も手続を行わなければ「プロ」扱いされることとなる。これらの会社に対しては、法律上、取引先の金融機関等から「アマ成りもできますよ」という告知が行われることが予定されている。それまでに自社のリスク管理体制などを踏まえて、「プロ」となるか「アマ」となるか慎重に検討することが求められるであろう。

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執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 横山 淳