低金利は家計から企業への所得移転か

2007年4月2日

  • チーフエコノミスト 原田泰
低金利は家計から企業への所得移転だという説がある。しかし、移転しているかどうかを決めるときの金利は、金利からインフレ率を引いた実質金利でなければならない。仮に金利が10%と高くても、インフレ率が20%なら、金利が高いから家計は報われているとは言えない。むしろ、家計は搾取されていると言うべきだ。

実際に、過去の実質金利を見てみると、おおよそのところ、60年代の高度成長期はマイナス、70年代初の超インフレ期にはマイナス15%、70年代末から80年代はプラス、90年代には低空飛行ながらわずかにプラスだった。これは定期預金金利の場合だが、普通預金金利の場合にはほぼ全期間にわたってマイナスで、実質金利がプラスになるのは90年代末以降のデフレの時代のみである。デフレで物価が下がっているから、金利がゼロでも実質金利はプラスだったのだ。

貯蓄とは現在使わなくてもよいお金を貯めておいて将来のために備えるものだ。インフレで価値が減価しては困るが、金利がインフレ率よりも高ければ価値は保存できる。大切なのは名目の金利ではなく実質の金利である。

さらに金利とは何かという問題がある。金利とは、企業が借金をして儲けた結果支払われるものである。企業の利益が高ければ金利は高くなるべきだし、利益が低ければ金利も低くなるしかない。会社は株主のものだなどと言って株主だけが一方的に儲けるのはけしからんという方は多いと思うが、その理屈が正しいなら、企業が儲かっていないのに貸主(預金者は銀行を通じて企業にお金を貸している)ばかりが儲かるのもけしからんということになるのではないか。

そうすると、企業が儲かっていた高度成長期やインフレ率の高いわりに金利が低かった60年代と70年代にこそ家計は搾取されており、80年代はまあまあで、企業が儲からずインフレ率が低かった90年代はやむを得なかったと考えるしかないのではないか。

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