サブプライム問題の本質

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2007年03月22日

  • 成瀬 順也
2月27~28日の世界同時株安。当初、要因は「上海の株価急落」とされ、次いで「米国の景気失速懸念」へと移った。最後には「日銀の利上げ」が犯人扱いされる日がやって来ようが、現在は「米国のサブプライム住宅ローン」が問題視されている。

サブプライム問題の本質は二つあろう。2003年後半から2005年にかけて、米国では好景気と銀行間の競争激化により、与信基準が大きく低下。一大住宅ブームが沸き起こった。問題は、この時、全く異なる二つのバブルが生じたとみられることである。

一つは巷間言われている通り。文字通りのサブプライム層(信用履歴の低い借り手)、つまり、所得が少ない、もしくは返済を遅延したことのある層に、過度に貸し込んでしまったことである。米国では従来から、信用履歴が低くても高い金利さえ支払えば、ローンを組むことが出来た。それがバブル化したのは、金融機関がリスクの大きい住宅ローンを推進したためである。たとえばARM。変動金利だが、当初数年間は低い固定金利が適用されることが多い。たとえばI/O。インタレスト・オンリーの略で、当初は金利のみ支払い、数年後に元本の返済が始まる。そして両者の組み合わせ。さらにはネガティブ・アモチゼーション。当初、金利さえも支払わない。ただし、金利がかからない訳ではなく、その間は金利分だけ元本が増えていく。こうしたローンの多くは3年程度経つと返済額が急激に膨らむ仕組みとなっている。今はブーム初期の2003年後半に住宅を購入した人に、跳ね上がる返済額に対処できないケースが出始める時期なのである。その意味では、住宅市場がピークをつけた2005年から3年後の2008年まで、問題は悪化し続ける可能性が高い。

もう一つは、あまり騒がれていない話だが、実は2006年に借り入れたサブプライムローンでも延滞率が上昇している。未だ3年経ってないのに、何が起こっているのか。ここに、もう一つのバブルがある。リゾート地の住宅価格は、ここ数年跳ね上がってきたが、コンドミニアムを完工前に転売する、現地も見ずにインターネットで売買するなどのケースが目立った。こうなると、完全にマネーゲーム。信用履歴も低くない層が「審査が甘くて早い」という理由で、サブプライムローンを利用していたのである。しかし、リゾート・バブルが破裂。こうした地域の住宅価格が急落したため、最後にババを引いたローンの借り手が住宅を売るに売れず、返済できなくなっているのである。

結局、サブプライム問題は、低所得層の多い地域と高級リゾートという両極で発生。折しも、米国では今年から民主党が上下両院を制し、同問題で共和党政権を糾弾するとともに弱者支援を訴えている。しかし、本当のサブプライム層と、金の亡者と化したサブプライムローン利用者の区分けは難しく、一筋縄では解決できない問題と言えよう。

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