家計が保有する外貨建金融資産は投信経由で急増

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2007年01月16日

  • 土屋 貴裕

2006年9月末の家計金融資産は1495兆円に増加した。投資信託や国債への資金流入が寄与し、投信と国債の残高は共に過去最高となった。しかし、外貨建の金融資産は、期中の円安傾向にもかかわらず、総額、前年比、家計金融資産に占める比率はそろって減少している。家計の外貨建資産運用は、話題となるいわゆる円キャリートレードの一つであり、外貨建資産残高の伸び悩みは実感と合わない。

家計金融資産のうち顕著な拡大をみせている投信だが、外貨建資産での運用が拡大しており、ある程度、家計が選択した結果でもある。そこで、家計保有分のアロケーションが投信全体と同じと仮定し、これを投信経由の外貨建資産として試算したところ、家計が投信を経由して保有する外貨建金融資産は急増している。家計金融資産における直接保有分とあわせた外貨建金融資産の構成比は、2000年頃は1.0%程度だったが、2.5%まで拡大している。念のため、投信経由での外貨建資産の増加を、資金流出入要因と価格変動等要因に分割を試みたが、資金流入が主な残高増の要因であることが確認できた。家計の外貨建投資は、主に投資信託を通じたものと言えるだろう。

投信経由での外貨建資産は具体的にはどこへ向かっているのだろうか。家計以外の保有分も含まれるが、運用動向を確認してみる。

国内公募投信の外貨建運用は、商品別では株式19%、債券67%、その他14%であり、債券の比率がやや低下する一方で、その他の比率が上昇している。REITやファンド・オブ・ファンズなど、オルタナティブ投資が拡大しているのである。国別のウェイトでは、米40%、ユーロ圏24%、豪11%、英、加と続く。国別商品別のうち、最も運用額が大きいのは米国の債券で、残高は漸増しているが、純資産の増大ペースにあわせたものではなく、米国債券で運用される比率は徐々に低下している。同様に、外国投信が運用する外貨建資産でも米ドルの比率が低下し、その他の通貨建ての資産が増加している。外貨建運用は、米国への選好が低下し、高金利国、新興市場諸国や通貨分散の対象となる国等に向けた運用が増加していることが指摘できる。

今後はどうだろうか。これまで、海外における利上げの継続で内外金利差は拡大してきた。為替面でも、急速に拡大する海外証券投資は、自ら円安を惹起(円高を回避)し、投資にまつわる為替リスクを許容し易くした。また、為替レートのボラティリティの低下で為替リスクが低下したことも、高金利通貨への投資を後押ししたと考えられる。

現状、各国の政策金利引き上げは終盤に近づき、米、加、NZでは据え置き、ユーロ圏や英、豪でも利上げは最終段階と見られ、内外金利差の一層の拡大は期待し難い。円高へ振れる可能性も高まり、金利、為替両面からみて、外貨建資産の積み増しペースは鈍化することとなろう。しかし、かつては為替レートの変動に伴って外貨建資産の増減が起きていたが、最近はそうした傾向がみられず、中長期的な視野に立った投資が行われている可能性がある。高収益性の追求と同時に分散投資への認識の強まりは、地に足がついている感があり、家計の外貨建資産の着実な積み増し継続が予想される。

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