世界における格差問題

2006年11月27日

11月の米国の中間選挙ではブッシュ共和党が敗北し、野党である民主党が12年ぶりに上下両院を制した。背景の一つとして、所得等の格差拡大に対する不満が有権者の投票行動に結びついたと指摘されている。CNNが実施した出口調査によれば、有権者が投票する際に最も重要である考えた問題は、腐敗・倫理が42%で最も多く、続いてテロ40%、景気39%となっており、イラクは37%と必ずしもトップの問題ではなかったのである。ただ、イラク戦争に反対である人の90%は民主党に投票し、逆に賛成の人の90%は共和党に投票したという内容に意外感はない。有権者を取り巻く経済状態については、2年前よりもよくなっていると答えた人が29%だったのに対して、悪くなっているという割合は25%と大差はなかった。民主党を勝利に導いた原動力の一つは“変化なし”と回答した45%であり、このうち57%が民主党に、40%が共和党に投票したという(なお、“悪くなっている”と回答した全員が民主党に投票したわけではなく、約8割である。同様に“良くなっている”の8割が共和党に投票したと仮定すると、全体では共和党が46%、民主党53%になり、下院の議席数の比率とほぼ同じになる)。従って、正確には、“変化していない”ことへの不満、米国経済全体は成長しているにもかかわらず、実感が伴わない点が敗因といえるだろう。

今年10月には、NYダウが2000年1月につけた過去最高値(終値ベース)を更新したが、ブッシュ共和党には追い風が吹かなかった。2001及び2003年減税措置の経済効果を強調しても、富裕層優遇の批判は消せなかった格好である。また、2005年の世帯の年間実質所得(中央値)は6年ぶりに前年水準を上回ったが、依然としてブッシュ大統領が就任した前(2000年)よりも1000ドル以上少ない水準である。実際、共和党が上院で議席を失った州をみると、オハイオ、ミズーリ、ロードアイランドなど失業率が全国平均を上回る州が半分を占めている。ブッシュ大統領も選挙後の記者会見で、早速最低賃金の引き上げに言及している。感謝祭翌日の11月24日から本格化したホリデー商戦だが、事前調査では、昨年実績をやや下回るという内容が多い。支出予定額の分布をみると(ConferenceBoard調査)、1000ドル以上使うという割合は昨年並みであるが、200ドル未満に抑えるという割合はやや増えており、全体を押し下げる要因になっているとみられる。

格差の問題は日米にとどまらない。EUが11月22日に発表した報告書によれば、単一通貨であるユーロを導入した国々の間で成長率やインフレ率にばらつきが生じているために、困難な問題に直面しているという(理念通りであれば、モノ・ヒトの移動を通じて差が縮小していくはずなのだが)。また、10%近い経済成長を遂げている中国においても、下位10%に相当する貧困層の実質所得は、2001年から2003年の間で逆に2.4%も減少している(FinancialTimes11月22日付による)。足もとの世界経済は5%近い成長が続いており(IMFの予想では2006-07年も約5%)、過去25年間を振り返っても非常にパフォーマンスがいい時期といえる。だが、その裏側に、格差拡大という共通の問題が存在することを注視しておくべきだろう。

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