日本以外は世界同時株高

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2006年11月17日

  • 小林 卓典

このところ日本の株式市場に停滞感が漂っているが、いつのまにか日本以外は世界的同時株高という様相を呈している。日本市場の不振にはいくつかの要因が指摘されている。世界経済減速による景気不透明感、下期以降の企業業績への不安、個人消費の失速、日銀の性急な追加利上げなどである。

それぞれに一理ありそうだが、世界経済の減速懸念で景気の不透明が強まっているなら、日本以外の株式市場でも株価は上がらないはずだ。日本の景気を強く牽引してきたのは輸出だが、輸出依存度が日本よりもはるかに高いシンガポールや、通貨高が輸出企業を圧迫している韓国市場では株価が上昇している。

企業業績については、好調な今年度上半期に比べて下半期の業績に対する会社見通しは、非常に慎重である。これが投資家を失望させたという説もあるが、過去2年もこの時期の会社側の予想はかなり控えめであった。過去と同様、時間とともに上方修正されていくパターンが下半期も繰り返されて行くだろう。

個人消費については、確かに弱い数字が多い。7-9月期の個人消費の伸びはマイナスだったが、夏場の天候不順だけでは説明が難しい。過去3四半期、雇用者所得の増加率が低下し、それにあわせて個人消費が伸びなくなっている。戦後最長の景気拡大と謳われながら実感に乏しいと云われるのは、賃金が伸びていないことに一因がある。

しかし、賃金が伸び悩む背景には、新興国、途上国の台頭により、先進国との間で賃金裁定が働いている可能性がある。労働コストが抑制され、低い賃金上昇率、低インフレ、個人消費の伸び悩みが、各国の共通現象として観察される。

ただ、構造調整を終えた日本は、企業の活力と労働市場のダイナミズムを取り戻し、持続的に成長するメカニズムを復元したと期待されていたはずだった。個人消費の失速は、その期待を削ぐ象徴事例として捉えられているのかもしれない。何しろ昨年の東証株価指数は4割以上も上昇したから、その後も期待感を持続させるのは容易なことではない。

しかし、前述したように輸出を支える外部環境、企業収益の拡大に大きな変化が生じているわけではなく、いずれ日本市場の再評価が行われるはずだ。とすると、日銀の追加利上げについては、いずれは越えるべきハードルの一つとして、問題になるのは利上げのタイミングだけである。年度内の追加利上げには賛否両論あるが、それ自体は株価低迷の理由として弱いのではないか。

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