設備投資が多い企業と株価の関係

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2006年10月23日

  • 吉野 貴晶
「設備投資が多い会社は成長企業で株価も伸びる」と一般に考えられる。製品のニーズが高いため設備投資が行われ、需要に対応した供給体制を整えるという ケースが多い。これは売り上げの増大につながり、企業は成長していくとみられる。こうした企業は株価も評価され上昇すると考える。しかし実際に調べてみる と傾向が異なっている。

米国における分析が昨年、翻訳・紹介された(※1)。まず、1957年から2003年までの 長期間にわたり、S&P500銘柄を対象として設備投資額を売上高で割り規模で調整したデータを基準に5つのグループを作る。そして、設備投資額が売上高 に対して最も大きいグループに投資した場合と、最も小さいグループに投資した場合の投資効果を比較した。この結果、意外にも最も小さいグループの投資効果 が非常に高いというものだ。

設備投資が多い企業の株価が弱い理由

この理由は次の3つと考える。一つは、設備投資する時はすでに製品の需要がピークを越えているケースがある。簡単に言えば、商品がヒットしても新工場等を 造るにはお金がかかるため、しばらく既存の体制でしのぐ。それでも生産が追い付かないと、ようやく設備を増やすものだが、すでにブームは下り坂になったり する。二つ目の理由は、設備投資が減価償却を通して利益を圧迫することである。三つ目の理由は、最も重要と考えるが、設備投資が旺盛な企業は投資家の将来 への期待が高まるため、株価が割高に買われ過ぎる傾向がある。そして、その修正の動きから株価が調整してしまうのだ。実は、分析を深めるため、業種を調整 した場合でも同様の結果が得られた。

単純に設備投資が少ない企業が良いとはいえないが、設備投資が多すぎる企業をみる上では注意が必要かもしれない。

(※1)ジェレミー・シーゲル、瑞穂のりこ訳『株式投資の未来』日経BP社、 2005年

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