漢方医薬品を現代的国際医薬品に育成せよ。

-中華人民共和国科学技術部が新たに取り組む漢方医薬の国際研究開発プログラム(日本語全文掲載)-

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2006年09月08日

  • 浅野 信久
  • 大城 千鶴
中国が「世界の工場」と称されていることは、すでに一般に広く知られている。世界のパソコンのかなりの割合が広州市と深セン市の間の地域で生産されている。衣料、雑貨、玩具、携帯電話、デジタルカメラ、自動車など、いまやハイテク製品、ローテク製品の区別なく、世界のあらゆる分野で中国製品を目にする機会がずいぶんと増えてきた。

そして、さらなる戦略として、その世界の工場は医薬品の製造を本格的に手がけようとして動きだしている。実際、このところの中国の医薬産業の進展ぶりには目を見張るものがある。米国FDAの定めた医薬品製造基準であるGMP基準に適合した医薬品工場はすでに国内に存在している。中国FDAは世界に先駆けて、遺伝子治療薬を認可した。遺伝子治療薬は、現在中国国内のみであるが医療用医薬品として販売されている。インドと同様に、ジェネリック薬の製造拠点としても世界中の医薬品メーカーが注目している。

そして、中国が次なる成長戦略の柱の1つとして選択したのが漢方医薬の国際商品化である。中国では、漢方医薬は伝統的医療として、古くから広く普及している。だが、現在の新薬とくらべると、有効性や安全性に関する証拠が必ずしも明らかとなっていないものが少なくない上、疾病の予防や治療に未知の可能性を持つものも少なくない。

そこで、中国の科学技術部は、現代医学ではいまだ解決できない治療ニーズや健康増進ニーズに、漢方医薬で応えることを目標に、このほど新プログラムを打ち出した。このプログラムが、漢方医薬国際科学技術協力プログラムである。この中の具体的なプログラムとしては、(1)漢方医薬の重要な難病に対する予防、治療、及び保健に係る臨床研究、(2)国際市場のニーズに合致した現代漢方医薬品の研究と開発、(3)漢方医薬品の国際基準と規範の研究、(4)漢方医薬に関する国際共同研究開発プラットフォームの構築、(5)漢方医薬品に関する知識の普及、(6)国際共同研究開発に係る人材養成が掲げられている。また、プログラムの実施にあたっては、中国科学技術部が世界的な専門家から構成される国際的専門家委員会の組織や中国政府に加え外国政府なども拠出する本プログラム向けの基金を設立する計画である。

日本の政府、大学、研究機関、医薬品メーカーも本プログラムに参加し、国際的視野に立った漢方医薬の発展に寄与するとともに、世界レベルでの疾病の克服と人々の健康増進に貢献されることを期待する。

なお、今回、中国人民共和国科学技術部より、漢方医薬国際研究開発プログラムの日本語への翻訳と掲載について、許諾を得たので、下記に日本語訳の全文を掲載する。

漢方医薬国際科学技術協力プログラム(PDF)

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