スピードが出すぎた中国はどうする

2006年8月4日

世界経済の状況は、米国が住宅市場の軟化によりやや減速感を強めつつある一方、ユーロ圏ではドイツを筆頭に輸出主導の回復が内需に波及する形で自律的な成長が始まり、日本では好調な企業収益を背景に設備投資が一段と積極化することが見込まれる中、今年度も実質3%近い成長が達成される勢いといったところだ。

三極の中央銀行とも安定成長につなげるため金利水準の正常化を進め、超金融緩和終了後の新しい金融秩序を模索している。このように共振する先進国の景気動向、金融政策の方向性とはかなり様相を異にするのが中国である。

今年に入り中国の実質成長率は第一四半期の10%台から、第二四半期には11%台へと加速した。名目成長率は第一、第二四半期とも14%台であった。中国にとって高成長を続けることは何ら困らない。また堅調に推移する日本の輸出が、中国経済の加速化からメリットを受けていることは言うまでもない。ただ懸念されるのは、行き過ぎた投資ブームが、いつか深い景気の下降を伴って終息する可能性があるという諸外国の歴史が教える経験的な事実があるからである。

7月末、中国の温家宝首相は、固定資産投資を抑制し景気過熱を防ぐ必要があると発言した。すでに預金準備率引き上げなど、部分的に引締め策がとられている。しかし、名目14%成長の国で5-6%の貸出金利はあまりにも低すぎ、引締め策が実効をあげるとは思えない。ただ、これがあくまで引締めの幕開けであり、政策当局が投資抑制策を実行する意志を固めているのであれば、05年の前半のように日本経済を停滞させる一因となった対中輸出の急減速が起こる可能性がある。

しかし、今回の場合、その可能性は低いと見るのは、次の理由による。04年の前半から過剰投資を抑制するため、量的な金融引締め策に加え、中央政府の強力な行政指導の下、投資プロジェクトを停止させるなどの強行措置が執られた。その結果、固定資産投資は大幅に鈍化したが、内需が減速した副産物として貿易黒字が爆発的に増加し、04年の約330億ドルから05年の約1000億ドルへ3倍にも増えた。

政策当局が再び強権を発動して投資を抑制すれば、貿易黒字はさらに拡大するだろう。それが米中間の貿易摩擦の緊張を高めることは想像に難くない。また、黒字拡大により人民元の切上げ期待が高まれば、中国への資金流入が増加し、当局の意図に反して過剰流動性の吸収が阻害される。だとすると、中国に残された手段は、為替レートの変動幅をさらに拡大し、人民元高を容認することだろう。為替調整がすっぽりと抜けた今のマクロ経済政策にはやはり限界があるのではないか。米国の金融政策とともに中国の為替政策は年後半の注目点になる。

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