特許から見た電子商取引ビジネスの競争力

2006年6月15日

  • 産業コンサルティング部 栗田学
~ 重要特許の8割は米国企業が出願~
多くの産業に共通する近年の大きな変化に、知的財産への意識の浸透がある。象徴的な出来事として、「ビジネスモデルにも特許が認められる」という判決を きっかけに1998年~03年にかけて巻き起こった、電子商取引分野での特許出願ブームが挙げられよう(図参照)。この期間、コンピューターを利用した新 しい電子商取引のビジネスモデルが特許として大量に出願され、かつ特許権が付与された件数(登録件数)は増加の一途をたどっている。すなわち、この分野で 企業の優勝劣敗が顕在化してくるのはこれからである。

ビジネスモデルとは、文字通り、企業が行うビジネスの手法である。これが特許として認められることは、他社が同じ手法によってビジネスを行えなくなる可能 性を秘めている。日本での電子商取引の市場規模は年率20%以上の伸びを示していることを考えると、この分野の特許は一国の産業競争力にも影響してこよ う。しかしながら、電子商取引に関する重要特許(※1)のうち8割は米国企業が出願したもの であり、日欧を大きく引き離しているのが現状である。

~日本は競争力のある分野に偏り~
国際競争力を測るもう一つの指標に、海外への特許出願件数がある。日本企業の中で健闘しているのは大手電気機器メーカーであり、欧米企業に交じって上位に 位置する。ただし、上位40社に限ると他の業種の企業はなく、金融、通信、ソフトウエアなど、多くの業種が含まれる米国とは対照的である。業種の特徴を考 えると、日本は電子商取引のインフラを提供する分野では競争力を持っているものの、インフラを使って新しいサービスを提供する分野には課題があることを示 している。

さらに、ゲームやアニメをはじめとする世界有数のデジタルコンテンツ保有国である一方、これをいかに効率的に流通させ、市場拡大につなげられるかもまた日 本の課題となっている。

したがって、電子商取引を活用して利用者の利便性を向上させ、かつ豊富なコンテンツを生かすビジネスモデル創出の意義は大きい。その際、高齢者の利用の活 性化が重要なポイントとなる。ネットショッピングによる年間平均購入金額は、50歳代以上が若年齢者層を上回り最も多くなっているからである。新たなビジ ネスモデルの成否には、年齢層、性別、といった利用者の特徴をいかにビジネスモデルとマッチさせるかがカギとなろう。

(※1)「重要特許」とは、被引用件数等を参考に抽出。詳しくは、特許庁「平成 17年度特許出願技術動向調査報告書―電子商取引―」を参照。

(参考文献)
・特許庁「平成17年度特許出願技術動向調査報告書―電子商取引―」
・(株)情報通信総合研究所「MIN第45回アンケート インターネットショッピング利用実態調査VIII」(2005年11月)

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