「CIOの仕事」って知っていますか?

RSS

2005年11月25日

  • 野中 秋利
CIO(※1)という言葉はWilliam R. Synnott氏が『The Information Weapon -Winning Customers and Markets with Technology-』(※2)という本の中で使ったのが最初とされている。日本でもCIOという言葉が使われ始めてから何年もたつが、いろいろな立場の人がCIOと呼ばれている。一般的には情報システム部門の責任者として使われている場合が多いようであるが、本来CIOに期待される仕事、立場、能力とはどのようなものであろうか。

この本では「CIOは情報を識別し、定義し、収集し、蓄積し、処理し、保護し、分配する過程を統合計画する最高の経営管理者である。」としている。この説明からするとCIOの仕事は企業戦略に沿った全体最適な情報の処理や活用の仕組みを実現するために継続的に、(1)営業や管理などの業務部門の組織、体制、役割、手順を改善・改革し、(2)情報技術を使って効率的な業務プロセスと情報システムを作ることになる。

このように企業の業務改革をするような仕事をするCIOは企業のどのような立場に立つ必要があるのだろうか。一般に企業は次のような三層のモデルで表すことが出来る。

ビジネス・モデル企業が利益を生み出す商売の仕組み(経営層、企画部門)
プロセス・モデルビジネス・モデルを実現するための組織・体制や業務プロセス
(営業部門、管理部門、コールセンター、事務センター・・)
システム・モデルプロセス・モデルを効率的に実現するための情報システム
(情報システム部門)

この三層モデル構造から見ると明らかなように、ビジネス・モデルの立場に立たないとプロセス・モデルとシステム・モデルをコントロールできない。情報システム部門(システム・モデル)だけの責任者では立場上、前述のようなCIOの仕事を進めることは難しいことになる。

さらに、英語の表現を見ても明らかである。情報システムの責任者であるならばCISO(※3)と表現されるはずである。CIOはInformationとだけ表現されているのであるから企業の情報に係わる統括責任者ということになる。 そして、Synnott氏はCIOの能力については「CIOは情報技術全般に通じている必要があるが、専門家である必要はない。対人折衝力と政治力に優れ、業務上の観点から業務管理職とわたりあう能力をもつ必要がある。」と答えている。

(※1)CIO:Chief Information Officer 「最高情報責任者」
(※2) William R. Synnott「The Information Weapon-Winning Customers and Markets with Technology」 「戦略情報システム-CIOの任務と実務-」 日刊工業新聞
(※3)CISO:Chief Information Systems Officer 「最高情報システム責任者」

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。