香港ディズニーランドの悲劇?

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2005年09月29日

  • 肖 敏捷

9月12日、香港ディズニーランドが開園した。東京都の半分の面積しかない弾丸の地である香港には、世界屈指の金融、貿易センターとしての機能が集約されている。ヒト、モノ、カネ、情報の流れに敏感に反応し、金儲けに奔走する超現実的な日々に追われる香港人は、この夢と魔法の国を待ち遠しく思っていたに違いない。しかし、開園とともにその熱意は急速に冷め、美しい夢は失望に変わろうとしている。狭い、混雑しているなどの悪評もさることながら、その最大の原因は中国大陸からの観光客にあるようだ。国内の報道によると、ディズニーランドでは一部の大陸観光客による、傍若無人な喫煙、所構わず寝そべる、上半身裸になって涼む、などの「非文明的な行為」が目立つと伝えられている。香港のマスコミは、大陸の観光客に占領されるディズニーランドは悲劇の始まりと嘆いている。

いうまでもなく、全ての大陸観光客がこのような「非文明的な行為」をするわけではなく、香港ディズニーランドにとっては大陸の観光客も大切なお客様である。しかし、海外渡航者が急増するとともに、この種の「非文明的な行為」に対する苦情が頻繁に聞かれるのも残念ながら事実である。中国人観光客を積極的に受け入れている国や地域にとって、地元経済の活性化への期待感がある一方、マナーやルール違反への対応が難しい課題となっている。対応次第では、マナー違反など些細なことが、人種差別や民族感情に対する侮辱と受け止められ、政治や外交摩擦につながりかねないためだ。

一方、調和社会の実現や世界との共栄共存を目指す中国にとって、「滅公奉私」の横行是正と、国民の教育水準やマナーの向上が急務となっている。上海の新聞によると、夜中2時に住宅団地で爆竹を鳴らし、近所や警察から非難された住民が、「福建省の慣わしに従う引っ越し祝いだ、何が悪い」と反論したというが、これは「金を払っているのだから何をしても自由だ」と同じく、マナー違反者にありがちな言い訳であろう。原田泰氏は「世相でたどる日本経済」のなかで、日本が経済大国として成功した理由の一つとして、「人々が他人の利益を損なうことなく自己の利益を最大にするように努力してきた」と分析している。北京オリンピックや上海万博の会場で「香港ディズニーランドの悲劇」を繰り返さないためにも、是非この指摘を参考にしてほしいものである。

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