電子公告に期待する

RSS

2005年06月06日

昨年成立した「電子公告制度の導入のための商法等の一部を改正する法律」が、今年の2月1日に施行された。電子公告制度において、公告の内容をチェックするという重要な役割を果たす調査機関も、3月1日に第一号が登録された(NTTデータ)。法務省でも、現在実施されている電子公告を検索できる「法務省電子公告システム」を既に立ち上げて、運用を開始している(http://e-koukoku.moj.go.jp/)。

このように電子公告を巡る環境が整備されたことを受けて、電子公告を導入する、あるいは導入を予定する企業が増加している。5月末時点で、制度調査部で確認できたものだけで90社以上の上場会社が、電子公告を導入するための定款変更を実施又は予定している。特に、3月決算会社の6月定時総会を控え、5月以降、「電子公告制度の導入に関するお知らせ」や「定款の一部変更(予定)に関するお知らせ」で、電子公告導入のための定款変更を予定していると発表する会社が相次いでいる。その顔ぶれも、いわゆるネット関連企業だけではなく、食料品、石油、繊維、航空など、様々な業種の企業が見受けられる。もちろん、上場会社全体の数からすれば、未だごく一部ということになるだろう。しかし、制度スタートの初年度にしてはまずまずの導入状況と考えられる。

電子公告のメリットとしては、しばしば企業サイドのコスト削減効果が挙げられる。確かにそうした面は否定できない。しかし、電子公告のメリットはそれだけではないだろう。一般の株主にとっても様々なメリットが考えられるのである。例えば、特定の新聞を購読しなくても、パソコンや携帯電話などで、その企業の公告ホームページにアクセスすれば、権利行使や異議申立に関する情報を得ることができるようになる。また、新聞公告では、特定の掲載日の(しばしば小さな文字で書かれた)公告欄を見落としてしまうと事後的に確認することが困難な場合も多い。電子公告であれば、一定期間継続してホームページに掲載されているため、その期間内であればいつでも確認できる。

もちろん、セキュリティやデジタルデバイドなど対処しなければならない問題もあるが、企業サイド、株主サイドの双方で、今後、電子公告の普及が更に進むことを期待したい。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 横山 淳