アルゴリズム・トレーディング普及のポイントとは

2005年5月19日

  • NY情報技術センター 伊藤慶昭

アルゴリズム・トレーディング(Algorithmic Trading)とは、証券会社が機関投資家からの注文を特定の論理やルールに従って自動的に処理する取引システムを意味する。利用アルゴリズムの種類を選択して各種パラメータを設定すると1つの大口注文が複数の小口注文に細分化されて、マーケット・インパクトを抑制しながら売買を実行する仕組みである。金融IT調査会社のTowergroupによると、米国株取引全体におけるアルゴリズム・トレーディングの利用割合は2004年に17%であったのが、2006年末には27%程度にまで拡大すると予測している。これまでも自動執行システムは存在していたが、証券会社が注文を引き受けた後、トレーダーが自社の取引システムに再度入力する必要があり、注文が膨大な数に分割されるケースになると人手の介入する業務プロセスでは対応が困難であった。その点アルゴリズム・トレーディングでは、膨大な取引作業を短時間で処理することが可能な上、投資戦略パターンも豊富に用意されているのが特徴となっている。最近は証券会社の取引基盤を利用して市場と直結するDMA(Direct Market Access)と併用することで、より複雑になりつつある投資戦略を的確に履行している。

このようにアルゴリズム・トレーディングが普及しつつある反面、大手証券各社が一斉にアルゴリズム・トレーディング分野に進出したことで各サービスの相違が表れ難い状態となっている。一方、機関投資家は自社の投資戦略に適用するアルゴリズムがどの企業から入手できるか判明するに従い、以前よりも複数サービスの試用を控えるようになった。このような状況を背景に証券会社は、サービス提供にあたり様々な工夫が求められている。具体的には、機関投資家がアルゴリズムをカスタマイズできる環境を提供すると同時にそのサポートを行うといった他社サービスとの差別化や、執行コスト評価機能や計測精度の向上が挙げられる。その他にも、アルゴリズム用のシステムを新規に導入する条件では利便性を欠くため、発注基盤であるOMS(※1)を通じ、同システムのメニューの1つとして提供する等、機関投資家が利用するシステムとの親和性に富むことが望まれる。

アルゴリズム・トレーディングの発展と共に、証券会社におけるトレーダーの役割を危ぶむ声も聞かれるようになっている。確かに一定水準の業務はコンピュータ処理に依存するケースが増加している。しかしながら市況や企業情報を認識したり、流動性が低く執行が困難な取引に対して柔軟な交渉によって成立させるのは依然としてトレーダーの役割である。アルゴリズム・トレーディングで大切なことは、機関投資家の投資戦略や目標をきちんと理解した上で適切なアルゴリズムを提供し、パフォーマンスを測定しながら次の投資戦略に生かすことであると考える。

(※1)OMS(Order Management System)
機関投資家のトレーディング・システムで主に、(1)ポートフォリオのモデリング、ベンチマーク等の定量分析、(2)ポートフォリオ・マネジャーからブローカーに至る一連の発注指示・作業、(3)コンプライアンス業務、(4)約定報告等の機能を備えている。

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