米国の中心で、自由をさけぶ

2005年2月16日

アメリカ大統領が年頭に議会で行うState of the Union Address(一般教書演説)は、一年間に政権が取り組む内政・外交の課題に対する基本的な姿勢が示されることから、国内のみならず海外の関心も高い。特に、今年はブッシュ政権2期目のスタートであり、今後4年間の施政方針という意味合いもあったとみられる。過去においては、ブッシュ大統領は"悪の枢軸"や"無法者政権"などの過激なフレーズで特定の国を名指しで非難していた。

今回の一般教書演説では、最も重要な課題の一つとして、社会保障制度改革を真っ先に挙げて、social securityと叫ぶこと計18回。大統領就任演説では1回しか出てこなかったことと比べると、改革に取り組むブッシュ大統領の意気込みを言葉上は感じられる。一方、就任演説の時に連呼された"自由"(Freedomは27回、libertyは15回)というフレーズは、今回は3分の2に減っている(Freedomは21回、libertyは7回)。ただ、"自由"に言及している原稿量は社会保障改革の約2.5倍に及んでおり、ブッシュ大統領のなかではやはり最も重要なフレーズは"自由"になろう。演説の最後も"It lead to freedom"と、freedomで締め括られている(但し、神への感謝の言葉は除く)。なお、自由を世界中に拡大すると謳った就任演説が、一般教書演説の4割程度の量であった点を考慮すると、freedomあるいはlibertyへの偏重が一段と目につこう(耳につこう)。実に、原稿全体の2%に相当する。

さて、ブッシュ大統領が最重要課題に掲げた社会保障制度改革だが、あまり支持は広がっていない。公的年金制度の一部に個人勘定を導入することが目玉だが、世論調査をみると、自己責任による資金運用に懸念を示す割合が高かったり、負担が増えるような制度改革には反対の声が強い。アメリカ最大の労組が反対を表明している他、議会では民主党だけでなく、身内である共和党からも慎重な声が挙がっている。ただ、このまま何もしなければ制度が破綻するという見方は国民全体の7割近くに達しており、ブッシュ大統領のアピールが効いているのかもしれない(なお、破綻時期については、ばらつきがみられる)。

しかし、腑に落ちないことに、これだけ制度改革の必要性に言及しながら、2009年から個人勘定をスタートさせることに伴うコスト増を、予算教書の財政見通しに盛り込まなかったのである。一方で、ブッシュ政権は、今後10年間(正確には2009~15年)で利払い費も含めて7540億ドルの移行コストが必要になるという試算を明らかにしている。そしてボルテンOMB局長は、記者会見で、同コストを含めれば、2009年度と2010年度の財政赤字はそれぞれ対名目GDP比1.7%になるとも述べている(含めないとそれぞれ1.5%、1.3%)。

予算教書では財政赤字が半減する道のりを示したが、同コストを含めると、GDP比では半減になるものの、金額ベースでは半減するかは微妙である。これ以外にも、米軍のイラク駐留費を見通しに反映させていない点もあり、公約実現のための辻褄合わせという指摘は拭いされない。ブッシュ政権にとっては、真実の姿を見せないことも"自由"なのかもしれない。

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