ストック・オプションの費用計算とモデルの限界

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2005年02月14日

  • 田中 一嘉
昨年末に、企業会計基準委員会が発表した公開草案によると、来年、2006年4月以降に付与されるストック・オプションついて、その費用計上が義務付けられることになる。そうなれば、費用計算をするために、何らかのモデルが必要となるが、そのひとつとして考えられるのが、現在、米国でも広く用いられている、ブラック=ショールズ・モデルである。このモデルの最大のメリットは、簡便さにあると言えるだろう。しかし、モデルであるがゆえの限界もある。

ブラック=ショールズ・モデルによる費用計算は、想定期間とボラティリティの値に大きく影響される。はじめに、想定期間とは、権利付与日から権利が実際に行使されるだろうと思われるまでの期間である。(多くの場合、想定期間が長くなるに従って、費用は大きくなる。)実際に、ストックオプションの権利行使がされるかどうかは、その時々の株価水準に大きく依存している。つまり、想定期間を設定することの難しさは、将来の株価を予想することと同じ位と言うことができるだろう。つぎに、ボラティリティとは、ある期間の株価変化の程度を示すものである。(ボラティリティが大きくなるに従い、費用も大きくなる。)具体的な計算方法は、公開草案では言及されていないので、米国の会計基準案を参考にすると、ボラティリティの計算に影響するのは、(1)想定期間、(2)ストック・オプションの付与時期、(3)株価データの頻度である。(1)については、既にみたので、(2)と(3)について考える。(2)について、例えば、同じ1年間の株価変動と言っても、その1年をいつにするかによって違いがでるだろう。(3)は、株価データを日次のものを使うのか、あるいは週次のものにするのかで、結果が変わってくる。

このように、ブラック=ショールズ・モデルによる費用計算にも困難はつきまとう。これは、モデルである以上、避けることはできない。重要なことは、どのようなモデルを使うにせよ、そのモデルの限界を知ったうえで、より合理的な仮定や条件に基づいて、計算がなされることであろう。

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