健康ベンチャーの時代

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2004年11月25日

  • 浅野 信久
「健康」が、国民の関心の高いテーマの1つであることは疑いない。実際、会社の行き帰りで、初老の夫婦が仲良く早朝の散歩を楽しむ姿や、ダイエット専用のスポーツウェアを身にまとい夜間に熱心にジョギングする人の姿を眼にする機会が、最近増えてきた。著名な公園や皇居周辺では休日となれば、大勢の人がランニングに興じている。フィットネスクラブでは、若者や主婦に加えて中高年者の参加者が着実に増えつつある。生活習慣病予防という視点からは歓迎すべき社会の変化である。

しかし、今年10月に厚生労働省がまとめた国民の健康づくり運動「健康日本21」の進ちょく状況からは、残念な結果が報じられた。目標に掲げた項目の約4割弱が予想に反して悪化を示したのである。特に、適正体重の維持では顕著である。20~60歳代男性肥満者の割合の目標値は15%であるが、改善どころか当初24.3%が29.4%に、悪化した。国民全体からみれば、健康増進に積極的に取り組んでいる人々は、まだまだ少ないことの表れなのであろう。

ところで、起業家の視点からみると、健康ビジネスに潜在需要はあるということになる。どのように需要を喚起するかが課題であるが、健康増進は商機のある注目分野である。わが国はまもなく本格的な少子高齢化時代に突入する。医療や介護の費用の急増が予想される中、負担軽減につながる健康ビジネスの振興は社会経済的にも重要な意味を持ってくる。すでに、経済産業省では健康サービス産業創出支援事業を展開している。また、多様な健康ベンチャーが誕生してきている。具体的な事業モデルを列挙すると、健康度測定機器開発、在宅健診サービス、健康保険組合等を対象とする健康支援情報サービス、健康支援施設サービスなどがある(図表)。大手企業による、IT系健康支援サービス構築に向けたコンソーシアムあるいは会員制健康クラブ創設の動きもみられる。

健康ベンチャーは、次々に新サービスを生みだしている。だが、どちらかといえば、事業者先行型で、それに利用者がうまく追従してこないといった命題を抱えているのも確かである。健康ビジネスが高い収益ビジネスとなるには、もう少し時間を要するかもしれない。いずれは、国民の多くがこれら健康ベンチャーにより提供されるサービスを利用するようになろう。健康ベンチャーの成長により、医療・介護費急増が夢物語に終わってほしいものである。今後の健康ベンチャーの動向には注視すべきであろう。
健康関連企業の一例
カテゴリー 企業名 事業内容
健康機器関連 (株)エムシー研究所 血液流動性測定装置
(血液サラサラ度)開発・販売
(株)フューチャー・ウェイブ 血管脈波(血管年齢)
測定装置開発・販売
(株)ユメディカ 血管脈波(血管年齢)
測定装置開発・販売
(株)キヤノントレーディング 腕時計型心拍計輸入販売
オムロンヘルスケア(株) 血圧計、体重体脂肪系、
歩数計の開発・販売
(株)タニタ 体重計の開発・販売
(株)ヒュリア 筋力測定機器の開発・販売
(株)エルクコーポレーション 脳年齢計の開発・販売
在宅健診サービス (株)日本メディカル総研 郵送健診サービス
(株)リビングプロシード 郵送健診及び
会員制健康クラブ運営
健康支援情報サービス (株)ハーディー 人間ドック向け自動診断システム
(株)つくばウェルネスリサーチ 筑波大発ベンチャー。
健康増進事業・運動プログラム提供等
ヘルスケア・コミッティー(株) 疾病管理サービス、
健康・医療情報提供等
(株)日本医療データセンター 医療データベース構築・
医療ソリューション事業等
健康支援施設サービス (株)ライフコンプリート 健保向け健康管理サービス・
介護福祉関連事業等
(株)タラソシステムジャパン 千葉・勝浦市で海洋療法専門施設運営
(株)スポーツプレックス・ジャパン フィットネスクラブ。
メディカルフィットネスプログラムの提供等
出所:DIR調べ

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