殺伐としたパン屋

2004年10月26日

  • 情報技術研究所 本谷知彦

 とある近所の小さなパン屋。店内は殺伐とした雰囲気。パンの陳列方法も工夫が無く適当だ。おまけに店主は接客下手。閉店時に下ろしたシャッターは汚れていて、お世辞にも店全体に清潔感を感じるとはいえない。さぞ売っているパンも不味かろうと思いきや、これが全くの正反対。大抵のパンは実に美味しい。特に黒胡麻あんパンは他の店にはないオリジナルで、もっちりとした食感と黒胡麻あんの濃厚な味わいは絶妙である。少し遅い時間に行くと必ずといっていいほど売り切れている。

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 老若男女インターネットを利用する時代になった。平成16年度版の情報通信白書によると、我が国のインターネット人口は平成15年末で約7,730万人に達し、人口普及率は60%を突破している。当然ながらホームページの使いやすさ、使い勝手といったいわゆる『Webユーザビリティ』が大変重要視されている。新聞や雑誌などでWebユーザビリティランキングが発表されるなど、サイト提供側は僅かでも手を抜くことが許されない。
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 ところが、ランキング上位サイトを覗いてみると、意外にもつまらないホームページに見えてしまう場合がしばしばある。確かにサイト構造やナビゲーション類も考慮されており、情報設計(Information Architecture)が施されていることがうかがえる。だが結局何を訴求したいのか、何を売り込みたいのか、他社とは何が違うのかがよく見えてこない。
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 こん日、Webユーザビリティが重要であることは間違いない。一方で(当たり前であるが)Webサイトの目的をしっかりと見定め、それに沿ってコンテンツを堅実に提供することが本来の姿であり、このことが実践できていなければたとえWebユーザビリティが優れていても、サイトの価値・魅力は確実に落ちてしまう。ビジネスの目的に合わせて「何を見せるか」ということと、それを「いかに見せるか」は出来る限り両立させなければならない。
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 先のパン屋。殺伐さも解消され陳列も考えられていれば完璧である。だが店主の気持ちとしては「そんなことに時間を割くくらいなら、美味しいパンを焼き上げるために十分な手間をかけさせてくれよ。だって俺はパン屋なんだからさ。」とでも主張したいのだろう。黒胡麻あんパンを口に運ぶたびに店主の思いがじんわりと伝わってくるのと同時に、こん日のホームページの「在り方」を私はしみじみ感じさせられてしまう。

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