株券ペーパーレス化と「タンス株」

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2004年04月21日

2004年3月5日に、株券不発行制度の法案が国会に提出された。株券不発行制度とは、株式の発行・流通・消却などの全ての過程において、株券(券面)を不要とする制度である。実現すれば、株式市場における決済の迅速性・安全性の向上や、単元引下げなどに伴う発行会社のコスト削減が期待される。法律が成立すれば、上場・公開会社については、法律の公布日から5年以内の政令で定める日から、一斉に株券が廃止され、株式取引は新しい株式振替制度の下で口座間の振替により行われることとなる。

株券不発行制度・株式振替制度の大枠は、昨年発表された法制審議会の「株券不発行制度の導入に関する要綱」に従ったものとなっている。しかし、今回明らかになった細目の中には、非常に大きな意味をもつポイントも含まれている。そのうちの一つが、株券を「タンス株」として手元に持っている場合の移行措置である。

一斉移行日の前に、予め保管振替機構に預託している場合は、原則、そのまま新しい株式振替制度の振替口座簿に転記されるので、特に手続なしに新制度に移行できる。他方、「タンス株」として株主の手元にある場合は、(株主ではなく)発行会社が指定した信託銀行等の口座で管理されることとなるのである。この口座はあくまで権利を保全するためのもので、取引などには利用できない。そのため、株主は、どの信託銀行などに口座が設けられているかを確認した上で、別途、証券会社等に振替口座を開設し、その株式を移管しないと取引できない。つまり、「タンス株」として一斉移行日まで株券を手元に持っている場合、株券ペーパーレス化の後、移管手続が終わるまではその株式を売却できないこととなるのである。そうした事態を防ぐためにも、また、円滑なペーパーレス化を実施するためにも、一斉移行日までに、保管振替機構への預託を進めていく必要があるだろう。

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執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 横山 淳