活性化策の効果が出てきた株式新興市場

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2004年03月30日

  • 平野 清久
売買ボリュームはネットバブル期を越えつつある
 2004年に入り、株式新興市場Ⅰの活況ぶりが目立っている。日経ジャスダック平均は03年末から04年初にかけて、21連騰Ⅱという歴代2位の連騰記録を作った。その後も年初来高値を更新するなど、上昇基調が続いている。
 値動き以上に目に付くのが、売買ボリュームの増加である。3月に入り、新興3市場の売買代金が一日当たり1千億円を超えることが珍しくなくなってきた。このまま推移すると、3月月間の売買代金は2.3兆円程度となる。この金額はネットバブル期のピークであった00年2月(月間売買代金:2.2兆円、当時ヘラクレス市場は設立されていない)、ヤフーの東証1部上場というイベントがあった03年10月(同:2.3兆円)と肩を並べるか上回る水準となる。
 03年10月、JASDAQ市場の時価総額で25%、売買代金でも2割近くを占めるヤフーが東証1部に上場することで、新興市場の規模縮小が懸念された。しかし、わずか半年でその穴はふさがれようとしている。

新興市場活性化策の成果が出てきた
 このような活況は、基本的には日本の株式市場全体の回復によるものであろう。しかし一方で、90年代後半に進められた市場活性化策の成果が出てきたともいえよう。
 ここ5年ほどで日本の新規公開企業の公開時企業年齢は、29歳(平均)から20歳へと9歳若返った。最近では新規公開の3分の1が設立から10年未満の企業である。
 00年前後には、ITベンチャーブームの名のもとに、人気先行で利益の出ないままに消えていく企業も少なからず存在したが、楽天、インデックス、グッドウィル・グループ等、新興市場には数十億円規模の利益を挙げる企業が増えてきた。現在、東証1部上場のヤフーは、今期300億円以上の経常利益を挙げることが予想されるほどに成長している。
 株式公開制度の緩和、公開実務の簡素化等を進めた結果、まだ成長途上にある魅力的な企業が株式市場に登場し、投資家の期待に応えて成長するという好ましい循環が生まれてきている。
 10数年前、JASDAQ市場(当時、店頭市場)の年間売買代金は東証1部の1日分でしかなかった。
 現在は、新興3市場の1ヶ月分の売買代金と東証1部の1日分の売買代金がほぼ同水準である。徐々にではあるが地殻変動は進んでいる。

Ⅰ) 設立間もないベンチャー企業等の育成をサポートするために設けられた株式市場。かつては店頭市場(現JASDAQ市場)のみだったが、99年に東証がマザーズ市場、00年に大証がナスダック・ジャパン市場(現ヘラクレス市場)を相次いで立ち上げた。
Ⅱ) 1月27日に03年10月の高値を更新した。

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