定款授権による自己株式の取得

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2004年02月05日

昨年9月25日から、新たな自己株式の取得の方法が加わった。それまでの一般的な自己株式の取得は、商法210条に基づき、定時株主総会で一年分の枠を取り、それに基づき会社が自己株式を取得するといううものであった。しかしながら、一年の内に予想外に自己株取得の需要が生じる場合に対応できない、今後いつ必要になるかわからないので予定がないのに枠を取っておかなければならないなどの問題点が指摘されていた。そこで、「定款授権による自己株式の取得」が創設されるにいたった。

「定款授権による自己株式の取得」は、定款で自己株式の取得の決断を取締役会に授権する旨を規定しておけば、取締役会は必要に応じて自己株式の取得を行えるというものである。もっとも、取得の方法が市場買い入れと公開買い付けに限られることや、財源がいわゆる中間配当可能利益の範囲に限られることなどの制約はある。この定款授権による自己株式の取得が9月25日から利用可能となった後、この制度を利用可能とすべく定款変更した会社も出現している。また、定款規定の基づき、取締役会で自己株式取得を決定した会社あるようである。

このように利用されてきた制度であるが、発行会社の頭を悩ませていることもある。この制度を創設する法改正を提案した議員や法務省の解説によれば、定時株主総会の議案を提出するまでに、自己株式取得の予定がある場合は、商法210条の定時株主総会で一年の枠をとる方法をとるべきであるとされている。それゆえ、会社としては、定款授権による自己株式の取得だけでは済ませることはできないのか、どのような場合が商法210条によらなければならないのか、頭を悩ましている。

商法210条によるべき場合を限定的に考えてもよいのではないだろうか。つまり、定時株主総会の招集通知の印刷の変更が可能な時期までに、自己株式取得の予定が確定している場合のみ、商法210条によらなければならないと考えてもよいのではないだろうか。もっとも、このような考え方をとる上で、会社が株主、投資家に十分な説明を行っていることが前提であろう。

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