モジュール化への取り組みが中国活用のポイント

2003年11月17日

  • 情報技術研究所 坪根直毅

情報サービス産業界において、中国に開発拠点を求める動きが活発化している。ソフトウエア開発のような知的作業を、文化、言葉の壁がありコミュニケーションの取り難い外国へ外注化するためには工程と組織のモジュール化が必須である。ソフトウエア開発における中国活用は、情報サービス産業界のプロセスイノベーションのトリガーとなるだけでなく、知的作業のプロセスと組織のモジュール化をいかに実現するかという意味でもその成否が注目される。

IT革命という言葉をあまり耳にすることもなくなった。米国MITのR.ソロー教授の問題提起「コンピューターはどこにでもあるが生産性統計の中だけにはない」から16年後の今年出されたOECDのレポートⅠをみてもITの経済効果に関する疑問への明確な反証はなく、依然としてIT生産性パラドックスは検証すべき課題として残されている。身の回りの至る所にIT製品が存在し、インターネットも身近なものとなり、供給側のIT産業は発展した。しかし、IT生産性パラドックスで問われているのはIT利用者側の生産性向上であり、これに関しては明確な確証は得られていない。

なぜIT生産性パラドックスが生じるのか。その論拠の一つに調整コスト論がある。IT利用者(企業)がITを十分に使いこなせていないため、IT投資に比べてその効果が顕在化していない、ということである。その意味するところは、ITの投資効果を上げるためには学習や組織変革が必要であるということである。ITの利用技術が問われているわけである。このことは供給側からみれば情報サービス・ソフトウエアサービスの重要性が増してきたことを意味し、情報サービス産業に対する期待は大きい。

その情報サービス産業界において、コスト削減やソフトウエア技術力の利用を目的に、中国に開発拠点を求める動きが活発である。言葉、文化が異なり地理的にも離れた中国への外注化には困難が伴うが、その成否を握るキーワードはモジュール化Ⅱであろう。知的作業であるソフトウエアの開発もビルの建設と同様に幾つかの工程からなり、おのおのの工程ごとに専門家組織が必要とされる。中国シフトを成功させるためには、ソフトウエア開発の工程と組織そのもののモジュール化がポイントとなる。工程間、専門家組織間のインターフェースの標準化により、モジュール化されたソフトウエアの開発は各社の自主性、技術力に任される。モジュール化により、コスト削減だけでなく比較優位な技術力の利用が可能になるのである。

現在、情報サービス産業界で注目を集めている開発フレームワークⅢやコンポーネントⅣといった情報技術やCMMⅤもソフトウエア開発のモジュール化を推進するためのものということが出来る。このようなプロセスイノベーションこそがモジュール化を推進し、中国シフトを成功させ、結果として、より迅速かつ効率的な情報サービスの提供により、IT生産性パラドックスを解消することにつながるのではないだろうか。

ソフトウエア開発における中国活用は、情報サービス産業界のプロセスイノベーションのトリガーとなるだけでなく、ソフトウエア開発のような知的作業のプロセスと組織のモジュール化をいかに実現するかという意味でもその成否が注目される。

Ⅰ)「ICT and Economic Growth」(OECD)2003年 ICT:Information and Communications Technology(情報通信技術)
Ⅱ)対象とする業務やシステムを幾つかの独立した機能の単位に分割し、それを組み合わせる方法。
Ⅲ)システム開発を効率的に行うために、基本的な処理の自動作成機能や開発ノウハウをまとめたもの。
Ⅳ)ソフトウエアを部品化することにより、再利用性、流通性を持たせたもの。
Ⅴ)Capability Maturity Model:ソフトウエア開発能力を客観的に表す品質管理基準のこと。

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