2015年株主総会シーズンの総括と示唆

論点は「外形的なガバナンス整備」から「実効性・具体的な行動」へ

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  • コーポレート・アドバイザリー部 主任コンサルタント 吉川 英徳

サマリー

◆本年の株主総会は買収防衛策の再導入や種類株式の発行等に代表されるように、例年以上にコーポレートガバナンスの在り方に対して衆目を集めた株主総会であった。本稿においては、2015年株主総会シーズン(※1)における議決権行使状況を俯瞰したうえで、多くの会社にとってはコーポレートガバナンス・コード対応初年度となる2016年株主総会シーズンへの示唆を整理していきたい。


◆2015年株主総会シーズンの特徴としては、社外取締役の選任が進み外形的なガバナンス体制が強化される一方で、低ROE企業において経営トップ選任議案の賛成率が大幅に低下している事例が散見されている。他方、低ROEながらも株主との対話を強化し、株主還元策を含むROE向上策を公表した企業においては経営トップ選任議案の賛成率が大幅に上昇した事例も見られる。また、株主のコーポレートガバナンスや株主還元に対する意識の高まりを背景に、株主提案を受けた企業数・議案数は2001年以降の集計以来最も多くなっている。


◆2016年株主総会シーズンへの示唆としては、「外形的なガバナンス強化」から「実効性の確保」、そして「ROE向上に向けた具体的な行動」を求める動きが強まると考えられる。日本においてもアクティビスト投資家の活動が活発化しつつあり、そうした動きが米国同様に日本企業の「変化」を促す触媒となる可能性がある。多くの企業が目下コーポレートガバナンス・コード対応に取り組んでいるが、単なる横並びの開示対応で終わることなく、自社としてあるべき姿を整理し、その実現に向けたガバナンス体制を構築する契機とし、株主との対話の内容も踏まえ「具体的な行動」に結び付けていきたい。


(※1)2014年7月~2015年6月に開催された株主総会

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