ロシア万華鏡

第16回 ビーフストロガノフの発祥地にチョコ博物館

2008年4月24日

今年は2月にも3月にもロシア出張があった。2月はバレンタイン・デー、3月はホワイト・デーがちょうど出張の日程に入ってしまい、どちらの日にも日本から離れた土地で過ごすことになった。私はホワイト・デーについてはどこで過ごそうか特に拘りがないが、バレンタイン・デーは違う。チョコレートが大好きな私にとっては、日本のバレンタインは心行くまで幸福感を与えてくれる日の一つ。その日のために世界中から高級チョコレート、あるいは高級でなくとも美味しいチョコレートが集まってくる、まるでチョコブランドの東京サミットのような雰囲気が好き。バレンタインはチョコの日ではないことは知っている。でもプレゼントをあげたい恋人がたまたまいなくても、自分のために買ったチョコを堪能して十二分に幸せを味わえるのがバレンタイン・デーだ。日本のバレンタインは女の子の日であると私は思う。

とにもかくにも、今年はバレンタイン・デーの一週間前ぐらいまでは銀座のデパートのグラウンド・フロアーのチョコの香りと見栄えを競い合う雰囲気を味わっておいて、2月11日の夜行便に乗りパリ経由でサンクトペテルブルグに入った。その後モスクワに移動して、そこで14日のバレンタインを過ごすことになった。


ロシア出張にて

私は海外に行くとスケジュールいっぱいにアポイントメントを入れようとして、いつも大変欲張ってしまう。一日に3つのミーティングの約束をして、さらに朝食かランチにも人に会うことにしている。毎回、これが最後かのような勢いで限られた時間にできるだけ多くの人に会って話を聞くことに必死で、夕方になると、充実感の延長であろうが脱力を感じるのがいつものパターンである。2月14日もそうだった。最後の取材は夜8時近くに終わった。ホテルに帰る途中にモスクワならではの激しい渋滞にはまって、いっこうに進まない車のなかから街の観察に没頭した。


最近ロシアでもバレンタインの人気が増していることは知っていたが、実際にその日にそこに居合わせたのは初めてだ。都心の人気カフェやレストランの前で若いカップルが、今時はほとんど見ることのない行列を作っていた。よくみると、お店に入る順番を待つカップルにはひとつの特徴があって、女の子が一輪の花を持っているのであった。いつもお世話になっている運転手のセルゲイさんにバレンタイン・デーについて聞いてみると、やはり若者の間に人気で、お互いにプレゼントを交換するのが習慣になっているという。プレゼントといっても、ほとんどの場合にはバレンタイン・カードを交換するか、またそれに加え、男の子が女の子にお花をあげるのが一般的らしい。恋人同士が交換し合うカードはバレンティンカ<валентинка>と呼ばれている。どうしてカードは人気があるのかと、なんでも知っているセルゲイに聞いてみると、「若いからお金がないんだ」と極めて冷静な返事を受け、私はしばらく黙り込んでしまった。なるほど。カードでいいんだ。気持ちを伝えることこそが、バレンタインの心ではないかと納得してしまう。

ロシアではチョコレートはバレンタイン・デーの際に特別な意味を持つのかどうか。モスクワ中心のトベルスカヤ通りにある高級食料品店のエリセエフスキー店でチョコ事情をチェックしてみた。いつもと違っていることといえば、ドイツ製のハート型のチョコが増えたくらいであった。結局、ロシアのバレンタインの印象は、真冬のモスクワで一輪の花を大事に持つ女の子の姿である。バレンタイン・デーは、ロシアでもどうやら女の子の日である。


チョコ博物館前

それから一旦、日本に戻ったが、ホワイト・デーの3月14日にはサンクトペテルブルグにいた。ロシアには女性を祝う日は3月8日の「国際婦人の日」があるけれど、バレンタインのプレゼントを返す日本のホワイト・デーのような日がない。サンクトペテルブルグにいた3月14日はまったく普通の日であった。夕方に時間が空いたので街の中心をブラブラ歩いていると、「チョコレート博物館」の看板が目に入った。正確に言えば、看板を見る前に大きなサンタクロース人形が見えた。その人形につられ、チョコ博物館を探検する気になった。ひょっとしたら、美味しいチョコでも食べられる場所ではないかという下心も少なからずあった。


チョコレーニン

元は貴族屋敷の一部であった建物の地下に通じる階段を下りると、こじんまりとしたチョコレートのお店が目の前にあった。確かに普通のお店と様子が違い、博物館と呼びたくなるくらい壁際の棚に様々なチョコレートが並んでいる。猫に熊ちゃんや鳥、人形、それにどういうわけか、なんとレーニンの頭部の形をしたチョコの置物も飾ってあった。

カウンターのガラス箱には、ごく普通の板チョコレートと丸いチョコが入っていた。どれも美味しそう。その博物館のチョコレートの数と形のバラエティーに圧倒され、買うことを忘れるくらい不思議な「博物館」を後にした。


これぞロシアのビーフストロガノフ

書き忘れたが、チョコ博物館を見つけたのは偶然であった。本当は、ビーフストロガノフの発祥地とされるストロガノフ宮殿の中庭にあるロシア料理レストランを目指して歩いた最中の出会いとなった。ロシアを代表する外交官であり、大の美食家もあったグリゴーリイ・アレクサンドロビッチ・ストロガノフ Григорий Александрович Строганов (1770 - 1857) 伯爵は何人か優秀なコックを抱えていたという。そのなかの一人がビーフストロガノフを創作したと伝えられている。

しかし、向かっていたレストランはすでになくなったことが判明した後、「発祥地」からわずか数百メートルのお店でやはりビーフストロガノフを頼んだ。そこで驚いたのは、日本と違う料理が出されたことだ。大きなお皿には、ライスがなかった。その変わりにマッシュ・ポテトとピクルスがついていた。本当ですかって? 写真を撮っておきましたので、ご確認ください。

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