ロシア万華鏡

第3回 ロシア金融資本市場:過去、現在そして未来(シリーズ第1弾)

2007年1月9日

塗り変わる世界経済地図

英国の"The Economist"誌(2006年9月16日号)は、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)に代表される新興国の発展についての”The new titans- A survey of the world economy”と題する特集のなかで、2040年までに世界の経済地図を塗り替え新秩序を生み出すという見通しを示している。

ここ数年の新興国の経済成長は著しい。世界の経済大国上位10カ国(購買力平価ベースのGDP規模)をみると、2004年では上位から、米国、日本、ドイツ、中国、英国、フランス、イタリア、カナダ、スペイン、ブラジルの順だった。翌2005年には、米国の1位こそ変わらないものの、中国がドイツと日本を抜き去って2位に躍進し、スペインはトップ10から陥落し、ロシアに席を譲っている。

これが2040年時点の長期予測では、中国と米国が1位の座を巡って争い、インドは日本を抜いて3位に浮上。以下、日本、メキシコ、ロシア、ブラジル、ドイツ、英国、フランスが続くという見通しとなる。現在の先進5カ国(米日独英仏)と、BRICs+メキシコの新興国群がほぼ同等に並ぶ時代が来るというのである。

20~21世紀に経済超大国の地位にある米国と比肩する勢いで、中国が経済発展を遂げるという点は重要だが、注目すべきプレーヤーは中国以外にもいることを忘れてはならない。その一つがロシアだ。ロシアは2006年7月に主要国首脳会議(G8サミット)で初の議長国を務め、「世界エリートクラブ」の仲間入りを果たすなど、世界の政治経済において、着実に存在感を高めている。

それでは、日本の投資家はこの新秩序の到来にどう対応していくべきなのか。シリーズでは、ロシアの証券市場を例にそれを考えていきたい。


エマージング・パワーを支える金融資本市場

ロシアの証券市場は、CIS(独立国家共同体)および東欧における最大の資本市場であり、その時価総額は2006年11月末現在で7536億ドルと、2006年1月から3倍に拡大している。市場の時価総額のうち、国営独占企業で世界最大規模のガス会社であるガスプロム(時価総額2486億ドル)が40%弱を占めており、以下、ロスネフチ(国営石油会社、779億ドル)、ルコイル(石油会社、681億ドル)、スルグトネフチガス(石油・ガス会社、451億ドル)とエネルギー関連企業が続いている。

ロシアの主要取引所としては、国内証券取引の95%を占める最大のモスクワ銀行間通貨取引所(MICEX:Moscow Interbank Currency Exchange)と、ドル建てでも売買でき主に外国人投資家や機関投資家が売買するロシア取引システム(RTS:Russian Trading System、”RTS index”がロシアの代表的指数である)の二つがある。

市場の成長性については、この二つの取引所の売買取引高推移を見れば一目瞭然だろう。2006年1~10月のMICEXの売買取引高は5755億ドルであり、前年同期比で3・3倍に拡大している。(MICEX「ロシア証券市場および経済成長」2006年11月)。

ロシアにおける証券市場の売買取引高の 推移 MICEX 2003年:991億ドル 2004年:1,512億ドル 2005年:2,256億ドル 2006年*):5,755億ドル RTS 2003年:133億ドル 2004年:262億ドル 2005 年:380億ドル 2006年*):552億ドル
*)2006年1月~10月のデータ
出所:「ロシア証券市場および経済成長」2006年11月、MICEX資料より作成

2006年には、日本で設定されたロシア株を組み入れた投資信託が数日間で運用上の理由により募集停止されるケースもあった。中国、インドの株式・債券に対象を絞り込んだ投信でも、過剰な資金流入から、新規募集を停止するファンドが相次いでおり、中国、インド同様に、ロシア証券市場への投資が魅力を増している証拠といえるだろう。

しかし、こうした人気は、最近の好調なロシア株市況に支えられていると考えられる。十数年程度の長期スパンでの投資を考えた場合、投資戦略の意思決定が市場の短期的な動きによって左右される危険性を最小限に抑えるためにも、ロシア経済および資本市場についての基礎知識を身につけることは、極めて重要となる。


以下、数回に分けて、ロシア資本市場の歴史、現況、そして今後の方向性について述べることにする。次回はロシア証券市場の歴史を振り返ることにしよう。

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