菅野沙織クリック!アジア

第6回 日越経済協力関係をより高いレベルへ

2010年9月2日

日本ベトナムの協力関係は、1973年に外交関係が樹立された後、40年近く、政治および経済に限らず、人材交流、文化におよぶ幅広い分野で続いている。21世紀に入ってから両国関係はより高いレベルへと進化してきた。経済協力における戦略パートナーシップ構築に向けての動きは、日越投資協定(2003年)と日越経済連携協定(2008年)を軸にして発展している。

日越経済連携協定はベトナムにとって初めての二カ国間の経済連携協定となった。

日越の貿易・投資、日本からの対ベトナムODAは拡大傾向にある。2009年、日本は中国と米国についで、ベトナムにとって第3位の貿易相手国(約135億ドル)であり、2010年には二カ国間の貿易規模は150億ドルに達するとの見込みがある。日本はベトナムにとって最大の授助国である。日本からベトナムへのFDI総額は178億ドル(累積登録資本)で、対ベトナムFDIにおいて、台湾、韓国とマレーシアについで、4位(2009年)であり、約1200社の日系企業がベトナムへ進出している。2009年、円借款はリーマンショックの影響にも関わらず過去最高の1,456億円に達した(※1)。

ベトナムと日本、戦略的パートナーシップの重要性

日本にとって、アジア地域におけるプレゼンスが益々高まっているベトナムとの戦略的パートナーシップの構築は、地域全体の政治安定・経済発展の他、国内経済の活性化、および更なる経済発展に繋がる重要な意味合いを持つ。さらに、日系企業にとってベトナムへの進出は、中国と比べてさらに低い人件費というメリットを享受するとともに、投資先の多様化によって中国への事業集中によるリスクを回避することにもつながる。また、拡大が見込まれるベトナムの消費市場も魅力的であり、ベトナムは日本企業のアジア地域の生産ネットワークにおける重要な生産拠点の役割を担うと見込まれる。

ベトナムの経済発展は、地方開発などの大型インフラ整備プロジェクトから教育まで、様々な協力分野において日本企業にビジネス・チャンスをもたらしている。

今後とも7%の経済成長が見込まれるベトナムでは、投資資金の需要が高まっていく事が見込まれる。図表1はベトナムのGDPと投資の伸びを示しているが、海外からの投資(Foreign Invested Sector VND bn:ベトナム百万ドン)が2006年を境に急激に上昇している。経済成長と投資の相関的な関係を考えると、外国からの投資へのニーズがますます上昇することが予想される。

ベトナム政府の試算によれば、2011年~2015年の間に、経済成長に必要な投資額は330億ドルと見込まれ、これは2006年~2010年の投資額の1.9倍である(※2)。近年のベトナムの経済発展に伴い拡大していく生産および物流に必要なインフラ(エネルギー供給、港湾、道路など)の遅れが、国内外企業の事業拡大のネックになっている。現在は、ベトナム財政でインフラ整備に必要な投資の20%~30%しか賄えていない(※3)。一方、大型インフラプロジェクトは、大規模なファイナンスを必要としているため、外国からの投資への需要が高まっていく。

そこで公的資金だけではなく、民間投資家のプロジェクト参加の重要性が高まっている。特に、インフラプロジェクトに必要な長期資金を提供できる機関投資家を誘致することは、ベトナムの経済発展において重要な課題となっている。

日本の機関投資家への期待

大和総研のアジア投資アンケート調査(※4)によれば、調査対象の335社のうち、外国人投資家(Non Japanese Investors)の19.4%、我が国に至っては、年金基金(Japanese Pension funds)の7.6%、金融法人(Japanese Financial institutions)の13.3%しかベトナムへの投資実績が無く、中国、韓国及び他のアセアン諸国(インドネシア、マレーシア等)と比較しても最も低い水準に留まっている。しかし今後はというと、金融危機の影響も少なく、経済成長への期待が高まっているベトナムの魅力は、機関投資家にも伝わっていることがわかる。それは同アンケート内で、次のアジア地域の投資対象国として、ベトナムを外国人投資家で27.6%、我が国年金基金が15.3%、金融法人で22.7%が考えており、これは他のアセアン諸国と比較しても「タイ」の次に大きい結果となっている。(図表2参照)。

また「高い(高収益:Capital gain)、早い(早期エグジット:Speedy exit)、わかりやすい(財務諸表の透明性:Transparency of financial statements)」をベンチマークにしてアジアへの投資についての判断する欧米投資家と違って、我が国の機関投資家は、「安定(国の格付け重視:Rating)、長期的(早期エグジットを求めない)、投資分散(Diversification by countries or regions)」を重視して投資戦略を立て実施していることも同アンケート内に示されている。

ベトナムのインフラ整備に必要な「安定的な長期資金の提供」ができるという意味において、日本投資家がベトナムにとって最適なパートナーである。

しかし日本の投資家をベトナムに誘致するためには、国の格付けの格上げを念頭にいれての投資環境の改善、更なる証券市場の発展、国内機関投資家の育成、官民連携の投資スキームを可能にする法的フレームワークの構築の必要がある。

(この原稿は、2010年8月3日に在日ベトナム社会主義共和国大使館で行なわれた、ベトナム投資フォーラム第3回日越経済問題等協議会でのプレゼンテーション内容をまとめたものである。)

  1. (※1)出所:日本外務省、ベトナム計画投資省
  2. (※2)出所:VIR(June 2010)
  3. (※3)出所:VNA(May 2010)
  4. (※4)出所:世界各国のアジア地域への投資状況調査(2010年オルタナティブ投資サーベイ)

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