人事・健保・退職給付
中小企業における適格退職年金の移行にあたって

2011年7月13日

  • 年金・社会保険コンサルティング部 相馬 洋二
表は厚生労働省HPに記載されている「適格退職年金の企業年金等への移行状況」である。適格退職年金(以下、適年という。)は平成24年3月末にて廃止となり、その移行は残された時間と実際の作業を考えると最終局面を迎えている。「移行先」として最も多く選択されたものは、「その他(解約など)」であり、件数ベースで4割程度を占め、概算すると件数は約2.5万件程度となり移行先として最大となっている。なお、適年はその加入者数が300人未満の中小企業が9割程度を占めており、「その他(解約など)」に該当する事業所も多くがこの範疇にはいる中小企業と思われる。

適格退職年金の企業年金等への移行状況
(注1)適格退職年金から確定給付企業年金への移行数は、新規設立と同時又は既存の確定給付企業年金に適格退職年金から権利義務承継若しくは資産移換を行っている確定給付企業年金の数である。
(注2)適格退職年金から確定拠出年金及び中小企業退職金共済制度への移行数は、適格退職年金契約の全部又は一部を解除することにより、資産移換を行っている実施事業主数である。
(注3)複数制度への移行はそれぞれの制度に計上。

(出所) 厚生労働省HP 「適格退職年金の移行促進について」より抜粋

 「その他(解約など)」に該当する事業所においては、適年の制度上、解約時には事業主が拠出し外部積立した資産は、全て従業員に一定のルールに従い分配され終了(分配金は一時所得として課税)となる。すなわち、「適年=退職金制度」であればその退職金制度は消滅するか、あるいは適年が退職金制度の一部移行であれば制度の一部清算となり、いずれにせよ労使双方にとって退職金制度の劣化を意味することとなる。

本来、適年の移行先として「確定給付企業年金、確定拠出年金、厚生年金基金」(以下、企業年金等という。)が挙げられるが、移行全体に占める割合は、合わせて3割に留まっている。その理由として企業年金等は、「退職金制度」というより、「公的年金の補完たる年金制度」として性格を打ち出しており、このため企業年金等は受給権保護、受託者責任、情報開示を制度運営に求め、財政検証、加入資格、年金受給権付与、受給年齢要件、掛金設定等の制約が多い。一方、「中小企業退職金共済制度」への移行が3割を占めていることは、移行に関する規制が少なく、制度内容がシンプルで分かり易いこと等によるものと思われる。

そもそも、適年が広く中小企業に普及した理由は、法人税法上の観点から作られた制度であるために、制度設計、掛金設定等の自由度が大きかったことである。これに比べ移行先である企業年金等には、上記の制約が多くあり適年の移行におけるハードルとなっている。中小企業の視点に立ってこのハードルを引き下げておれば、受給権保護等に多少の問題が出るものの、企業年金等への移行はいま少し進んだ可能性が高いと思われる。 年金制度上の問題があろうとも、退職金制度の裏づけとなる制度が何も無くなってしまうよりは良いだろう。

今回の中小企業における適年の移行、及び今後の中小企業への企業年金等導入において重要なことは、「功労報奨的な一時金による退職金制度」と「公的年金の補完たる年金制度」の意味合いを、労使とも理解の上、調整を行うことである。

また、退職金制度からの移行である以上、企業規模、業種等における退職金水準格差の影響を年金制度も受けざるを得ないものの、今後予想される公的年金の支給開始年齢引上げ及び給付水準の見直しを考えた場合、一時金中心の退職金制度から企業年金等への移行を促進していくことが社会的にも重要と思われる。

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