企業経営
働き方改革における株式報酬活用のススメ

2017年12月6日

  • 経営コンサルティング第四部 コンサルタント 内山 和紀

政府による具体的な審議は来年に先送りになるものの、新聞を見れば毎日のように「働き方改革」のワードは取り上げられており、すでに定着しつつある。働き方改革は非正規雇用の処遇改善や、賃金引上げと労働生産性向上、長時間労働の是正、柔軟な働き方がしやすい環境整備などが主な検討テーマ(※1)であり、影響力のある企業を中心とした積極的な取り組みが期待されている。足元の業績は好況な一方、先行きが見えにくい経済情勢の中で、働き方改革への着手を検討されている企業担当者は、どのような施策が自社にとってベストな選択なのか悩ましく思われていることだろう。
近年、コーポレートガバナンス改革により役員へのインセンティブ報酬としての株式報酬が整理され、役員を対象とした特定譲渡制限付株式の導入など新たな株式報酬スキームを活用する事例が増えている。ここでは、働き方改革の視点から株式報酬を活用する例を検討したい。

働き方改革の中でも柱の一つとされる時間外労働の上限規制においては、残業時間の上限が月平均60時間に規制される。それに伴う所定外給与は最大 8.5 兆円の減少になるとの試算(※2)も出ており、インパクトはかなり大きい。
残業を減らすと経費は圧縮され、企業の利益に貢献する。経営陣にとっては喜ばしいことだ。反対に従業員からすると、残業時間削減の命令は会社がコストを下げるためだけを目的としているのではないかと不信感を生じさせ、また、残業を抑制されることで収入が減り不満を持つかもしれない。
あくまで目指すべきは生産性の向上及びそれによる企業価値向上であり、残業時間の削減は付随効果ではないだろうか。単純な残業時間削減の命令では、従業員の理解を得ることは難しい。そのため、各従業員が自発的に生産性向上策を実施したくなる仕組みを作り、結果として残業時間が削減されることが理想である。その仕組みとして株式報酬の活用は大変有効である。
例えば、部門ごとに設定した削減時間目標の達成を条件としてメンバーに株式報酬を付与・表彰してみてはどうだろうか。達成した部門のメンバーは、残業による収入の代わりに株式を得ることで収入の減少は軽減される。さらに、達成した部門が評価・表彰されることで、他の従業員への発奮材料となり好循環が生まれる。
このような仕組みは、生産性向上に取り組むことが会社と自分の利益のいずれにもメリットがあることをイメージしやすい。働き方改革は、従業員が主となって進めていく必要がある。そのため、従業員にとって取り組む意味やメリットがわかりやすい施策とすることが重要だ。

働き方改革では高齢者の就業促進も検討されており、65歳以降の継続雇用延長や65歳までの定年延長を行える環境整備を進めていくことを掲げているが、継続雇用延長の一方で多様な技術・経験を有するシニア層の活躍も中核の一つである。
継続雇用の場合の賃金は、定年時の賃金に比べて5~7割程度の収入になっていることが多い(※3)。前年までと同じく高い能力・経験を有しているにもかかわらず、継続雇用となった時点から報酬が大幅に減少することで勤務意欲が下がる方もいるだろう。ここでも株式報酬の活用が考えられる。
一つのアイデアとしては、優秀なシニア社員に対し一定期間の業績や勤務状況等を鑑みて株式を付与する、いわゆる後発行型として株式報酬を付与することだ。株式報酬のメリットは、キャッシュアウトを抑えつつ、優秀な人材の引き止め(リテンション)が図れる点である。そのため、シニア層への活用に限らず、IT業界やスタートアップ企業等の人材の出入りが活発な業界においては、優秀な人材や教育した新人の転職を防ぐ手段としても有効だろう。
加えて、後発行型の株式報酬は「頑張った結果としてもらえる報酬」のためモチベーションとなることが大きなポイントであるが、万が一、想定よりパフォーマンスを発揮できなかった場合や、せっかくスカウトしてきたが馴染めずにすぐ辞めてしまった場合など、付与しない理由も納得してもらいやすいことも活用しやすい点だろう。

もちろん導入に際しては、最適な株式報酬スキーム、コストのインパクト、納得性のある付与テーブルの設計、既存社員との不公平感の調整等を検討してく必要はあるものの、働き方改革とミックスした株式報酬は様々な形で活用の余地があると思われる。
ユニークな株式報酬の活用方法のアイデアがあれば、ご教示いただければ幸いである。

(※1)「働き方改革実行計画(平成29年3月28日)」首相官邸
(※2)「日本経済見通し:2017年8月(2017年8月18日)」大和総研
(※3)「平成24年度 高年齢者の継続雇用に関する実態調査」東京都産業労働局

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