企業経営
持株会社体制で次世代経営人材を育成する

2017年3月8日

  • コンサルティング・ソリューション第二部 コンサルタント 川田 悠史

昨今ニュースで見られた社外取締役や諮問委員会が関与した社長交代の事例やコーポレートガバナンス・コードの施行によって、次世代経営人材の育成や後継者計画への関心は大きく高まっている。意外に感じられる読者が多いかもしれないが、実はその解決の手段として持株会社体制への移行が検討・採用されている。

2014~2015年に持株会社体制に移行した上場企業60社を対象にしたプレスリリースにおける移行目的と、2016年に弊社が実施したアンケート結果(持株会社体制に移行することで解決したい課題)は以下の通りである。

図

上図に示されるように、プレスリリースにおける持株会社体制への移行目的として「次世代経営人材の育成」を掲げる企業は少ない。プレスリリースにおける順位は「その他」を除くと最下位(9位)であり、あまり読者に馴染みがないのも当然といえる。しかし、アンケート結果では「経営責任の明確化」と同等の3位まで跳ね上がる。弊社はこれまでいくつもの企業において持株会社化の検討・実施の支援をさせていただいたが、次世代経営者人材の育成について悩んでおられる企業は非常に多く、アンケート結果は筆者の感覚と一致している。

それでは、なぜ持株会社体制移行によって次世代経営人材が育成できるのであろうか。

持株会社体制移行により新会社が設立されると、持株会社の社長には従来の社長が就任すると仮定しても、事業子会社に新たな社長を登用することができる。事業子会社の社長を経験させることで、将来の持株会社社長候補の育成を行うことができる。

具体的には、後継者(幹部)候補に事業子会社の経営を任せ、事業計画を立案するとともに実践させる。事業子会社で経営を行うことにより、現場が近いことからそれに即した経営が経験できるし、当然そこには経営者としての責任が伴うことから、多少荒療治であるが経営を実体験することによる経営力の早期育成が見込まれる。経営失敗のリスクが懸念されるが、意思決定の範囲が事業子会社の領域に限られるので、グループ全体のリスクは限定されている。

一方で、持株会社の幹部も育成される。持株会社は経営企画・グループ戦略に特化していることが多い。グループ全体の視野を持ち経営資源の配分を意識させつつ、グループ戦略の立案および意思決定に関与させることにより経営の知識・能力・経験を培わせていく。

ここで持株会社は、各事業子会社における事業計画の妥当性や実施過程を含めた達成状況を見ることで、後継者候補の育成状況を把握するとともに経営者の資質を評価する。もちろん事業計画やその実施方法について改善の余地があれば指導を行い監督する。

事例に目を向けてみると、コーポレートガバナンス・コードには補充原則4-1-3(最高経営責任者等の後継者の計画)が存在するが、コーポレートガバナンス報告書において当該事項を実施しない理由として、持株会社と後継者について以下のように記述している企業も見られた。

図

持株会社体制移行により後継者育成の土壌を築きあげる、という企業の意図がわかる事例と言える。

繰り返しになるが、次世代経営人材の育成に悩んでいる企業は多く、実はその解決の手段として持株会社体制移行が検討・採用されている。
この目的だけで持株会社体制移行を決断する企業は少ないと思われるが、重要であることを認識しつつも対応が後回しになりがちな後継者(幹部)育成について、これを機に対応に踏み切ろうという企業が多いように見受けられる。

もし持株会社体制移行を検討しているのであれば、後継者(幹部)育成についても併せて検討してみてはいかがであろうか。

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