企業経営
コーポレートガバナンス・コードが変える役員報酬

求められる業績連動報酬制度

2016年2月3日

  • 経営コンサルティング部 主任コンサルタント 弘中 秀之

ファントムストック、SAR、パフォーマンス・シェア、リストリクテッド・ストック・・・、一体何のことかと思われた読者も多いのではないだろうか。これらは、コーポレートガバナンス・コードの中で「経営陣の報酬にインセンティブ付けを行うべき」と定められた以下の原則への対応として議論が高まっている業績連動報酬プランの一例である。

原則4-2:取締役会の役割・責務(2)
「・・・また、経営陣の報酬については、中長期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ、健全な企業家精神の発揮に資するようなインセンティブ付けを行うべきである。」

業績連動報酬には、広義では、近年かなり普及が進んできた前期や当期の業績に応じて割り当てられるストックオプションなども含まれるが、狭義では、将来の業績に応じて内容が変動する報酬を指す。前述のコーポレートガバナンス・コードでも、「中長期的な会社の業績」を反映させ、と明記されている。(※1)

このようなコードが規定される背景として、日本では、固定報酬の比率が諸外国に比べて高いと言われている点が挙げられる。しかし、金額ベースで見てみると固定報酬の額が諸外国と比較し高いわけではなく、むしろ低い。要因は、業績連動報酬の額の低さにある。(※2)

業績連動報酬は、業績や株式関連指標の目標設定およびそのコミットメントと一体で構成されるべきものである。見方を変えると、日本において業績連動報酬の比率が低い理由は、業績などの目標設定とコミットメントが過去、不十分であったためとも言える。

また、日本の会社の多くは、役員を選任する際、内部昇格が中心で、プロ経営者を外部から獲得する必要性が薄かったため、従業員の給与・賞与体系、評価基準の延長線上に、役員の報酬体系、評価基準が作り上げられてきた。このことも、業績連動報酬が日本の会社に拡がっていない理由のひとつと考えられる。

金融庁と東京証券取引所がコードの普及・定着と、コーポレートガバナンスの更なる充実に向け「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」を開催している。その中での議論は、「形式」から「実質の充実」に重点が置かれている。今後、スチュワードシップ・コードを遵守しなければならない株主・投資家が求めてくる対話の内容も、より踏み込んだものになってくるであろう。また、ROE等の利益以外の指標や中長期の指標に対応した報酬を損金算入可能とする税制改正も期待される。(※3)このような流れを踏まえ、自社に適した役員報酬制度をどのような内容で設計していくのか、多くの会社で今後の検討課題となっていくであろう。

冒頭に、業績連動報酬プランの一例を挙げたが、現在最も普及が進んでいるのは、ストックオプションを使ったプランである。例えば、中期経営計画を策定し、利益やROEなどの目標数値を定め、株主や投資家にコミットメントし、その達成状況に応じて行使できるストックオプション数量や、割り当てられるストックオプションの数量が変動するような報酬プランの検討が求められる。

現在、政府主導で進められているコーポレートガバナンス改革の目的は、「稼ぐ力」を高めることにある。(※4)このために「経営陣の報酬にインセンティブ付けを行うべき」という原則が意味するところは、目標を達成した見返りとして高い報酬が得られるようにすべきであり、そのためには目標を設定しコミットメントする必要があるということになる。言い方を変えると、今後、戦略策定や目標設定を行わないような無策の経営や、それらの内容が株主や投資家の信任を得られないものであることが、許されない経営環境になっていくということであろう。

(※1)さらに、補充原則4-2①では、「経営陣の報酬は、持続的な成長に向けた健全なインセンティブの一つとして機能するよう、中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきである。」と規定されている。
(※2)参考レポート 経済産業省「日本と海外の役員報酬の実態及び制度等に関する調査報告書」
(※3)参考レポート 大和総研「コーポレートガバナンス元年で注目されるインセンティブ改革の課題」
(※4)「日本再興戦略」改訂2014 -未来への挑戦-
      「日本再興戦略」改訂2015 -未来への投資・生産性革命-

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