企業経営
独立社外取締役に期待される役割とは?

2015年1月28日

  • コンサルティング・ソリューション第二部 主任コンサルタント 吉田 信之

アベノミクス第3の矢である成長戦略を、今後の日本の持続的な成長・発展につなげることができるかどうか。2015年はまさにその成否が問われる重要な年となるであろう。その成長の鍵を握る重要な施策の一つとして、「『日本再興戦略』改訂2014」ではコーポレートガバナンスの強化が掲げられており、日本企業のコーポレートガバナンスに関する議論も(かつてないほどの)盛り上がりをみせている。なかでも、昨年12月に公表されたコーポレートガバナンス・コード原案(以下、ガバナンスコード(原案))において、「独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべき」とされた点については、現在、複数の独立社外取締役を選任している上場企業が30%にも満たない(※1)ことを鑑みれば、否応なしに企業の関心は高まるものといえるだろう。つい何年か前までは、ほんの一握りの“ガバナンス優良企業”が先進的なガバナンスの取り組みの一つとして、複数の独立社外取締役を選任していたが、今後は、幅広く日本の上場企業に適用されることになるかもしれないことを思うと、隔世の感を禁じ得ないところである。

複数の独立社外取締役の導入についてこれまでも幾多の議論がなされてきたにも係らず、多くの日本企業においてその導入が見送られてきた理由としては、いくつかの要因が考えられるが、その最たるものの一つは「独立社外取締役の導入が本当に企業を良くするのか(その実効性に疑問がある)」ということではなかっただろうか。独立社外取締役を新たに導入するということは、その直接的な人件費もさることながら、自社を取り巻く経営環境や事業に関するレクチャー、取締役会決議の度に事前の十分なブリーフィングが必要となる等、様々な手間とコストが掛かる。また、(一概に悪いこととはいえないが)時として、経営の意思決定のスピードを遅くすることもある。企業本来の目的である利益獲得を鑑みれば、コストを掛ける以上はそれを上回るベネフィットが見込めないと二の足を踏むのは、ある意味、当然の帰結ともいえよう。

ここで、改めて(独立)社外取締役とは何かを整理しておきたい。社外取締役が担う機能は、主として、①経営者に対する助言機能、②経営全般の監督機能、③利益相反の監督機能、④取締役会の透明性向上機能である。日本の企業経営者が社外取締役について考える時には、どうしても前述のようなコスト・ベネフィットを考え、①の助言機能(いかに企業に利益をもたらすか)をイメージしがちである。一方、欧米企業や海外の機関投資家は、①よりはむしろ、②や③の機能を重視している。すなわち、株主が企業経営を委託する「経営者」を監視、監督するモニタリング機能を重視するのである。確かに、社外取締役の導入を会計監査のように上場コストの一つとして捉える考え方もあろうが、日本には監査役という特有のモニタリング機能があることを以て、日本企業にはなじまないという結論につながってきたともいえる。また、欧米企業における経営トップの強大な権限や高額な役員報酬が監視の必要性を高めていることや、“企業は出資者たる株主のものである”という株主至上主義的な考え方も、日本企業にとって受け入れがたい概念であったといえる。

もっとも、これまで多くの日本企業が独立社外取締役の導入を軽視していた訳ではなく、結果的に、独立社外取締役の導入を見送らざるを得なかった企業も多いのではないかと思う。例えば、自社に合う独立社外取締役の人材がいない、というそもそもの人材不足の問題は良く聞くところであり、何とか人材を探してきた場合であっても、当該者を三顧の礼を以て迎えた場合には、容易には代替候補者を出しづらいということもあろう。また、自社の事業に精通している顧問弁護士や会計士など有効な助言をもらえそうな人材は、独立性の観点から問題ありと判断されることも多い。さらに、最近では(これまでコーポレートガバナンス議論を主導してきた)欧米においても、社外取締役の実効性に疑問が出てきているといった話(※2)もある。

しかし、今回公表されたガバナンスコード原案は、これまでのような議論を全て踏まえたうえで策定されたものであるということを鑑みると、独立社外取締役について、認識を新たにすべきといえよう。すなわち、ガバナンスコード原案の真意としては、欧米企業は文化や慣習が異なるとか、日本には日本独自のやり方があるといった論法はもうやめにしようということを意図しているのではないか。現在の日本企業を取り巻く経営環境は、かつて日本的経営がもてはやされた高度成長期の時代と異なるステージに入ってきており、時として抜本的な改革も辞さないという覚悟が必要である。現在の日本企業にこれまでとは大きく異なる変革が求められているのだとしたら、全く異なるカルチャーをもつ外部の人材を企業のど真ん中に据えてみるのも一考である。このような意味において、独立社外取締役の導入は、企業を変える一つの大きな手段ともなりうる。

ガバナンスコード原案は、現在パブコメを募集中であり、2015年6月の株主総会集中時期をターゲットに完成を見据えている。“自社にとってどのようなガバナンス体制が最適なのか”は簡単に結論の出る話ではない。しかし、日本企業に残された時間はあまり多くない。

(※1)「東証上場会社における社外取締役の選任状況」(東証)2014
(※2)鈴木裕「「稼ぐ力」を増すためのガバナンス・コードとは?」、仮屋広郷「法と経済学から見た社外取締役」

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